著者
南部 久男 徳武 浩司 石川 創 大田 希生 藤田 健一郎 山田 格
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.17-22, 2009 (Released:2019-12-04)

2005年春に東京湾に出現したコククジラの出現状況を調査した。このコククジラは4月中旬から5月初旬にかけて東京湾内で目撃され、5月11日に千葉県南房総市旧富山町沖1kmの小型定置網で混獲されて死亡した。筆者等は5月5日から10日の間に東京湾の3海域(千葉県袖ヶ浦市沖、同県習志野市沖、神奈川県横須賀市〜横浜市沖)でこのコククジラを観察する機会を得た。いずれの出現海域も沿岸の浅海で、袖ヶ浦市沖(沖合50〜100m、最短20m程)と習志野市沖(沖合10m〜100m)では索餌をしていたと考えられ、横須賀市〜横浜市沖(沖合100〜1400m、水深11〜18m)では沿岸にそって北へ遊泳していた。本個体は東京湾へ迷入したものと思われる。観察結果からは泥底での摂餌嗜好性、北上しようとする意図があった可能性などを窺うことができた。