著者
近藤 直樹 日浅 芳一 岸 宏一 藤永 裕之 大石 佳史 大谷 龍治 和田 達也 相原 令
出版者
医学書院
雑誌
呼吸と循環 (ISSN:04523458)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1117-1120, 1993-11-15

フェノチアジン系向精神薬により誘発された致死的心室性不整脈の1例を報告する.症例は55歳,男性.二度の大動脈弁置換術の既往がある.1991年暮れ頃より,弁不全のため再度置換術の予定となった.同年頃よりうつ状態のためフェノチアジン系向精神薬やスルピリドを内服していた.1992年3月,失神発作があり,モニター心電図上,心室頻拍,Tor-sade de Pointes(Tdp)などの致死的不整脈を認めた.薬剤の中止にて不整脈は消失した.その後これらの向精神薬を再開後,再び同様の不整脈が発生したため,薬剤の中止と永久ペースメーカーの植え込みを行った.術前の不安感のため少量のフェノチアジン系向精神薬を再開した.術後10日目失神発作があり心室頻拍,Tdpの頻発を認めた.これら不整脈発作時には電解質は正常であった.術12日後,多臓器不全で死亡した.致死的不整脈の発生に,心血管系に作用が弱いフェノチアジン系向精神薬の関与が疑われたため報告した.