著者
大石 恭史
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.295-305, 2007-10-25 (Released:2011-02-17)
参考文献数
64

銀塩感光材料の分光増感技術の歴史を, その大きな流れを方向付けた次の主要な転換点に於ける, 技術革新過程に重点を置いて概観する: 1. 色素増感の発明, 2. 色素の進化-シアニン類の主流化, 3. 科学の役割-シアニン化学の確立, 4. 新合成法創出.
著者
大石 恭史
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.259-275, 2008-08-25 (Released:2011-01-04)
参考文献数
48
被引用文献数
1

1936年に, 革新的な技術に基づくAgfacolor Neu反転フィルムの突然の市場導入によって近代カラー写真が開幕した. Agfa社のWSchneiderらは, 分子内に脂肪族基と酸基を併せ持つ耐拡散性カップラーを乳剤層に組み入れることによって, 1度のカラー現像によってネガ像, 反転像のいずれをも形成できるこの革新技術を実現したのであった. これに対抗してEastman Kodak社の研究者は, 分子内に疎水性基のみを持つ「オイル分散型」の耐拡散性カップラーを案出して, 1941年に類型のKodacolor反転フィルムを開発した. これら新型のカラー感材の出現によって, 在来の多様な加色法プロセスは急速に衰退していった.
著者
大石 恭史
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.311-317, 2014 (Released:2016-09-28)
参考文献数
37

写真乳剤性能を画期的に向上させた金増感の発明と写真産業における利用の歴史を概観する.1936年ドイツのAgfa社は金増感技術を発明し高性能商品で業界をリードしたが技術を機密に保った.少数の他社は自力で追従できたが多くは,戦後の技術開示(PBレポート)を待たねばならなかった.このようにして業界に普及した金増感技術は写真感光材料の撮影能力を大きく向上し,全写真システムの前進を促した.PBレポートの技術情報の上に構築した新しい自社技術基盤を発展させて,それを土台にして日本の写真フィルムメーカは世界企業に伸張した.
著者
大石 恭史
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.410-424, 2008-12-25 (Released:2011-01-04)
参考文献数
49

1970年代以降に, それまでにKodak社によって築かれた技術基盤の上に, 富士フイルム, コニカ, Agfa-Gevaertなどの感材メーカーが夫々独自に開発した新カップラーを携えて技術革新に参入した. 世界の主要感材メーカーは競合しつつも全技術水準の向上によってカラー写真材料事業の成長維持に協力したのであった. カップラーの主要な技術革新の一つに, 新規の骨格分子構造の導入があった. これによって, 鮮やかな色再現, 画像の長期保存, 感材設計の合理化が実現した. 典型的な新骨格には, マゼソタのpyrazolotriazole, シアソのpyrrotriazoleの新型の反応性縮ヘテロ環と, イエローの置換基としてdioxothiadiazine環があった. これら新世代カップラーの発明は, ヘテロ環化学の適用によるところ大きく, 多くの研究者の長期にわたる組織的協力から産み出された.
著者
大石 恭史
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日写誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.349-367, 2008

40, 50年代にKodak社はカップラー内蔵型感材の色再現の改良に強力に取り組んだ. 新しい現像薬とカップラー等が, 基礎研究の基盤の上に開発された. 特に大きな効果を挙げたものとしては, 3-acylamino-5-pyrazoloneマゼンタ, pivaloylacetanilideイエローのカップラーがA. Weissbeger, PVittumらによって, カラード・カップラー型マスキングがWHanson, Jrらによって夫々見出され実用に供された. 生産面ではTRussellらによって発明された同時多層塗布法が感材の品質と生産性を飛躍的に向上させたばかりでなく, 感材設計に発展性をもたらした. 1960年頃Kodakの感材技術は第1次の完成期に達し, 業界他社に向かうべき方向を示していた.