著者
上村 吉穂 福田 護 江川 雅之 小杉 郁子 大竹 裕志
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.633-637, 2011 (Released:2012-08-09)
参考文献数
16

症例は,20歳代の男性.左背部痛を主訴に救急外来を受診.検尿で血尿を指摘され,当科を受診.DIPで左水腎症(grade 2),左腎盂尿管移行部(ureteropelvic junction;UPJ)狭窄,多発左腎結石を指摘.腹部CTでナットクラッカーディスタンスの短縮,腎血管造影検査で左腎高血圧を認め,ナットクラッカー症候群と診断.これらに対し,左腎静脈転位術,左腎盂形成術,左腎盂切石術を一期的に施行.術後経過は良好で,術後2カ月目には,背部痛や血尿は消失.術後3カ月目のDIPで,左水腎症の改善(grade 1),腹部CTでナットクラッカーディスタンスの延長を認めた.術後12カ月が経過し,症状や左水腎症の再燃は認めていない.我々が知る限りでは,ナットクラッカー症候群,UPJ狭窄及び多発腎結石の合併,及びこれらを一期的に手術治療した報告はこれまでにない.
著者
捶井 達也 石川 紀彦 堀川 貴史 瀬口 龍太 木内 竜太 富田 重之 大竹 裕志 河内 賢二 渡邊 剛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1056-1061, 2017-10-15 (Released:2018-10-23)
参考文献数
13

Barlow症候群は両弁尖に高度な粘液腫様変性による肥厚を特徴とする僧帽弁閉鎖不全症であり,僧帽弁形成術は困難である場合が多い.しかし弁尖の形態を正確に評価し弁形成を行うことで,Barlow症候群に対しても弁形成術は可能である.また我々はda Vinci Surgical System(da Vinci)を用いた完全内視鏡下の僧帽弁形成を行っており,Barlow症候群に対しても積極的に行っている. 方法:今回当院で経験したBarlow症候群に対するda Vinciを用いた僧帽弁形成術9例(男/女;6/3例,平均52.6歳,について検討した.手術は完全体外循環のもと,右胸壁の4つのポートからda Vinciを用いて僧帽弁形成術を行った. 結果:平均手術,人工心肺,大動脈遮断時間は223分,138分,76分であった.形成方法はArtificial neochordae 7例,Resection and Suture 3例,Folding plasty 3例,edge-to-edge 1例であった.使用した人工弁輪のサイズは34 mmが5例,32 mmが4例であった.全例人工心肺からの離脱に問題はなく,術当日に抜管し,翌日からリハビリテーションを開始した.全例で術後当日に抜管し,術後10.7日目に退院した.術後の心臓超音波検査では全例逆流に消失を確認した. 結語:da Vinciを用いた僧帽弁形成術は正中切開を回避できるため低侵襲であり,3次元画像と自由度の高い鉗子により術者の意図した形成術を行うことができる.そのため今回da Vinciを用いた完全内視鏡下でBarlow症候群に対する僧帽弁形成術は,良好な結果が得られたと考える.