著者
松本 勲 小田 誠 渡邊 剛 田村 昌也
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ナノテクノロジーを応用して作成したキトサンナノ繊維チューブ(C-tube)による胸腔内自律神経再生効果について検討した。ビーグル犬を使用し、交感神経および横隔神経を切断し、神経の断端をそれぞれC-tubeの両端に縫合した。いずれの犬も合併症なく生存した。術後1年でC-tube内で神経が連結しており、神経障害症状が回復する犬もいた。C-tubeは交感神経および横隔神経の形態的再生を促し、神経機能の一部を再生させることを確認した。
著者
島村 道代 ヒョン キソン 渡邊 剛 ソ インア ユ チャンミン 入野 智久 杉原 薫 山野 博哉
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.29-29, 2009

世界で最も高緯度に位置する、日本の壱岐サンゴ礁より採取されたキクメイシ属サンゴ骨中の酸素・炭素同位体比を分析し、中緯度域における高時間分解能古気候アーカイブとしての可能性を検討した。まず試料は莢壁と軸柱の骨格構造別に分析し、その結果を生育時の環境記録と対比・検討を行った。この結果、軸柱と莢壁は形成のタイミングが異なっており、キクメイシ属サンゴの場合、莢壁の方がより正確に環境を記録することがわかった。また本研究で用いたサンゴ骨格は、骨格構造自体にも成長パターンの季節的変化が見られた。これらの成果を基に、さらに長期に渡る骨格分析を行い、これらを周辺の環境と対比・検討したのでその成果を報告する。
著者
渡邊 剛 富田 重之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.531-535, 2005-05-01

冠動脈バイパス手術をめぐる最近1年間の話題 社会の高齢化に伴い,わが国においても虚血性心疾患は増加の一途をたどっている.冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;CABG)は1960年代にアメリカで開始され,その劇的な症状改善効果と比較的安全な手術であることから本邦においても一般的な治療法となった.しかし,一定頻度で脳梗塞などの重篤な合併症の出現があること,また一方でカテーテルインターベンション(PCI)の進歩により外科治療の位置付けは大きく変わってきた.PCIの適応拡大とともに,低左心機能の多枝病変,緊急手術などこれからの心臓外科医の使命は,より重症化し,また合併症疾患を持った症例に対し安全確実に遠隔期予後を改善する良い手術を行うことにある.特に多臓器疾患合併症や高齢者などのいわゆる重症例に対してより安全で確実な冠動脈再建が求められている. また,PCIは局所麻酔にて簡便かつ低侵襲に施行できる一方,それに比較しCABGは,全身麻酔,人工心肺,心停止,胸骨正中切開などが必要であり,侵襲が大きいといわざるを得ない.そこでこの10年間に心臓外科医は,手術の低侵襲下を追求し,人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術(Off-pump CABG;OPCAB)に取り組んできた1,2).人工心肺を使用しないOPCABは,吸引式の吻合部固定器具や,心尖部吸引型の心臓脱転器具などの開発に伴い,より安全で確実な手技となってきており,術後の合併症の低減や,死亡率低下へつながるとの報告も多くみられるようになった3~5).
著者
捶井 達也 石川 紀彦 堀川 貴史 瀬口 龍太 木内 竜太 富田 重之 大竹 裕志 河内 賢二 渡邊 剛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1056-1061, 2017-10-15 (Released:2018-10-23)
参考文献数
13

Barlow症候群は両弁尖に高度な粘液腫様変性による肥厚を特徴とする僧帽弁閉鎖不全症であり,僧帽弁形成術は困難である場合が多い.しかし弁尖の形態を正確に評価し弁形成を行うことで,Barlow症候群に対しても弁形成術は可能である.また我々はda Vinci Surgical System(da Vinci)を用いた完全内視鏡下の僧帽弁形成を行っており,Barlow症候群に対しても積極的に行っている. 方法:今回当院で経験したBarlow症候群に対するda Vinciを用いた僧帽弁形成術9例(男/女;6/3例,平均52.6歳,について検討した.手術は完全体外循環のもと,右胸壁の4つのポートからda Vinciを用いて僧帽弁形成術を行った. 結果:平均手術,人工心肺,大動脈遮断時間は223分,138分,76分であった.形成方法はArtificial neochordae 7例,Resection and Suture 3例,Folding plasty 3例,edge-to-edge 1例であった.使用した人工弁輪のサイズは34 mmが5例,32 mmが4例であった.全例人工心肺からの離脱に問題はなく,術当日に抜管し,翌日からリハビリテーションを開始した.全例で術後当日に抜管し,術後10.7日目に退院した.術後の心臓超音波検査では全例逆流に消失を確認した. 結語:da Vinciを用いた僧帽弁形成術は正中切開を回避できるため低侵襲であり,3次元画像と自由度の高い鉗子により術者の意図した形成術を行うことができる.そのため今回da Vinciを用いた完全内視鏡下でBarlow症候群に対する僧帽弁形成術は,良好な結果が得られたと考える.
著者
山崎 敦子 渡邊 剛 岨 康輝 中地 シュウ 山野 博哉 岩瀬 文人
出版者
日本サンゴ礁学会
雑誌
日本サンゴ礁学会誌 (ISSN:13451421)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.91-107, 2009-12-01 (Released:2010-08-07)
参考文献数
34
被引用文献数
2 4

温帯域の造礁性サンゴは地球温暖化や海洋酸性化の影響を敏感に反映し,骨格に記録していることが期待される。温帯域に生息する造礁性サンゴ骨格を用いた古環境復元の可能性を検討するため,高知県土佐清水市竜串湾において塊状のPorites lutea(コブハマサンゴ)骨格のコア試料を採取し,骨格の酸素・炭素同位体比分析及び軟X線画像解析,蛍光バンド観察を行った。現場の水温変化と比較するとサンゴ骨格の酸素同位体比には低水温が反映されていなかった。また軟X線画像解析の結果,低水温時には高密度バンドを形成し,骨格伸長量及び石灰化量が高水温時に比べ大きく減衰することがわかった。以上の結果からも本研究試料のサンゴは低水温時に骨格成長速度が著しく低下していると考えられる。炭素同位体比の値は2001年から2008年にかけて増大傾向にあった。蛍光バンドは2001年から2005年の間で強く観察された。また,2001年に竜串湾で起こった集中豪雨による懸濁物質の流入から竜串湾の濁度は数年間を経て減少しており,サンゴの光合成量が徐々に増大していることが示唆された。本研究試料は今後,コア全尺の分析により過去数百年間の海水温の変化を検出できる可能性がある。また,同時に竜串湾沿岸の開発や漁業,災害を記録していると考えられ,長期間にわたる竜串湾の歴史を復元できることが期待される。
著者
山崎 敦子 Steffen Hetzinger Jonas von Reumont Carrie Manfrino 角皆 潤 渡邊 剛
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

本研究では北大西洋の熱帯域に位置するカリブ海ケイマン諸島に生息する造礁サンゴ骨格から過去90年間の窒素固定の変遷を復元した。サンゴ骨格中に保存されている有機物の窒素同位体比を過去90年間分年単位で分析した結果、カリブ海の窒素固定量は過去90年間で減少傾向にあること、そして海水温に伴って数十年規模で変動しており、高水温時に窒素固定が増大してきたことが推定された。本講演では復元された窒素固定の変遷と温暖化および数十年規模の大気-海洋相互作用との関係を議論する。
著者
米田 しおり 山崎 敦子 渡邉 貴昭 Frederic Sinniger 波利井 佐紀 渡邊 剛
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>造礁性サンゴが生息する熱帯・亜熱帯の海で、水深30 m~150 mは浅場の海と区別してメソフォティックゾーン(中有光層:Mesophotic zone)と呼ばれ、環境変動に抗して浅場サンゴ礁とその生態系を保存するrefugiaとして近年関心を集めている。しかし、そこに生息するサンゴの環境適応に関しては未だ解明されていないことが多い。そのため、サンゴ骨格の年輪の解析からサンゴの成長、代謝、そして生育環境を分析することで、メソフォティックゾーンにおけるサンゴの成長と環境適応の履歴を探ることが本研究の目的である。各水深(4m、15m、40m)においてサンゴ骨格中に記録されたSr/Ca比から予想される水温を復元した。また、サンゴ骨格中に記録された酸素同位体比偏差の季節変動を求めた結果、骨格伸長量が小さい2月と8月に酸素同位体比偏差のピークが見られた。このことから、酸素同位体比偏差は伸長量の季節変動を示す指標となり得ることが示唆された。</p>
著者
末松 篤樹 野口 善令 横江 正道 吉見 祐輔 久田 敦史 宮川 慶 吉田 心慈 吉田 紗衣子 渡邊 剛史 井村 洋
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.36-38, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
4

American College of Physicians (ACP) 日本支部年次総会2013において, 「誰も教えてくれなかった診断学・中級編—鑑別診断を絞り込む」をsmall group discussionとして開催した. 症例提示を行い, 鑑別診断から絞り込む思考プロセスを体験するために, マインドマップを利用して疾患の全体像を把握する試みを行った. 参加者からは概ね好評であり, 診断推論を学習する機会を提供し, 診断推論の指導方法も広めることができた. 今後もこのような企画を学会で行い, 診断推論を学ぶ環境を整えていくことが重要と考える.
著者
山崎 敦子 渡邊 剛 川島 龍憲 小川 奈々子 大河内 直彦 白井 厚太朗 佐野 有司 植松 光夫
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.406-406, 2008

サンゴ骨格の窒素同位体比を用いて過去の海洋表層の栄養塩濃度とその起源を復元し、新たな古環境指標としての可能性を検討するため、外洋の沖ノ鳥島と石垣島轟川河口からサンゴ骨格試料を採取し、その成長方向に沿って窒素同位体比・総窒素量を1ヶ月の分解能で測定した。また比較のため、それぞれの窒素同位体比の測線に平行して沖ノ鳥島サンゴではBa/Ca比、Mn/Ca比を、石垣島サンゴではMn/Ca比を測定した。その結果、窒素同位体比・総窒素量の平均値は共に石垣島の方が高く、沿岸の方がサンゴの窒素同化が盛んであることを示した。さらに石垣島サンゴでは、河川からの流入物質の影響が窒素同位体比、総窒素量とMn/Ca比に反映し、沖ノ鳥島サンゴでは、海洋の鉛直混合や湧昇に伴う深層からの栄養塩の供給と海洋表層の窒素固定が窒素同位体比の変動要因として考えられる結果となった。今後、サンゴ骨格の窒素同位体比は海洋の栄養塩の挙動を復元する指標となることが期待できる。
著者
山本 宜孝 富田 重之 永峯 洋 山口 聖次郎 東谷 浩一 飯野 賢治 渡邊 剛
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.230-233, 2008-07-15
被引用文献数
2

症例は66歳,女性.9年前抗リン脂質抗体症候群,特発性血小板減少性紫斑病を指摘され,以後血液内科で通院治療を継続していた.今回心不全症状が出現,精査の結果III/IV度の大動脈弁閉鎖不全症と診断された.血液内科医師と連携をとり十分な準備と計画をたて心臓外科手術:大動脈弁置換術を施行した.術前には血漿交換とステロイドパルス療法を施行,また腎機能障害の増悪に対し透析をおこなった.術後は早期より抗凝固療法とステロイドの内服を行い,抗リン脂質抗体症候群の増悪を認めることが無く順調に経過した.
著者
呉 哲彦 小田 誠 渡邊 剛 村上 眞也 野々村 昭孝 湊 宏
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.31-35, 2004-02-20
被引用文献数
1

背景.喀痰細胞診での肺門部肺癌の発見例はほとんどは扁平上皮癌であり腺癌はまれである.我々の経験した粘膜内を表層伸展する肺門部肺腺癌の1例を報告する.症例.58歳の男性.咳漱を主訴に近医を受診し喀痰細胞診でClass Vと判定された.気管支鏡にて右上葉支B^1,B^2,B^3分岐部に黄白色の粘膜褪色部位が見られ,同部位よりの生検で肺腺癌の診断を得た.胸部CTでは右上葉支から右主気管支にかけて気管支壁の肥厚が見られた.術前診断T1N0M0の肺門部早期肺腺癌の診断にて右肺管状上葉切除およびND2bのリンパ節郭清を施行した.術中病理診断にて右主気管支中枢側断端に癌の浸潤を認めたため,気管分岐部直下まで追加切除し中間気管支幹と端々吻合を行った.病理組織学上,末梢側はB^1,B^2,B^3の亜亜区域支まで,中枢側は気管分岐部直前および中下葉支人口部2軟骨輪前までの範囲にわたり,粘膜に沿った伸展が高度な肺門部肺臓癌と診断された.術後病期はT3N0M0,IIB期であった.吻合部への放射線治療を追加し術後6年で再発の兆候は認めていない.結論.粘膜内を表層伸展する極めてまれな肺門部腺癌の1例について報告した.