著者
大蔵 綾子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.30-51, 2017 (Released:2017-03-30)

公文書等の管理に関する法律が2011年に施行された。同法の残された課題の1つに国会の文書管理が挙げられる。同法第14条に基づき、国会は公文書の適切な保存のため必要な措置を講じなければならないとされる。衆参両議院は公文書管理法の施行に対応し、従来の文書管理に関する規程を改正した。当該規程において規定される「文書」には、国の行政機関と同様に電磁的記録も含まれる。国会が作成する電磁的記録のうち最も重要かつ固有なものの1つに審議の動画があり、議員の発言が記録される。審議の動画は衆参両院においてインターネットを通じて中継され、中継の終了後は各院のウェブサイトで一定期間保存される。しかし、審議の動画は数年後にウェブサイトから削除され、その後の保存状況については明らかになっていない。そのため、一般の者が審議の動画を遡及的に入手することは困難である。そこで本研究では、先進諸国のうちアメリカ、イギリス及びドイツにおける審議の録画の作成、利用及び移管について調査し比較した。その結果、これらの国では審議の録画は公文書館に移管され一般の利用に供されていることが分かった。
著者
大蔵 綾子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.23-47, 2018 (Released:2018-03-29)

公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号)が2011年に施行された。行政機関と同様に立法機関にも適切な文書管理が求められている。しかし、立法機関は公文書管理法の趣旨を踏まえどのように文書管理を行っているのか、その実態については明らかになっていない。そこで本稿では、衆参両議院事務局における文書管理の状況を明らかにすることを研究の目的とした。そのため、衆参両議院事務局が制定する文書管理に関する定めのうち、文書の定義、作成、整理、保存に関する規定について検討した。その結果、衆参両議院事務局では同法の趣旨を踏まえた規程の改正が行われているが、文書作成の義務に例外があり、集中管理は行われていないことが分かった。
著者
大蔵 綾子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.57, pp.25-44, 2009-05-30

本稿は、2008年に衆議院において情報公開制度が設けられたのを契機として、立法府における情報公開の新たな展開につき現状と課題を提示するものである。
著者
大蔵 綾子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.55, pp.13-35, 2008-05-30

わが国の学校において、1990年代に注目を集めた情報公開問題は、多くの地方公共団体で指導要録の全面開示が決定されるなどして一定の進展をみせた。しかし、情報公開を実施するための文書管理の方策、特に文書管理規則等のような制度に関する検討は今後の課題である。国の行政機関における文書管理は、「行政文書の管理方策に関するガイドライン」に沿うこととされたため、文書管理規則等については、以前にみられた省庁間における差異は、問題を残しながらもある程度解消されている。これに対し、地方公共団体では、現在でも文書管理に関する制度は地方公共団体によって区々であり、文書管理規則等の内容に相当の差異が認められる。そのなかでも、学校は教育委員会の下におかれているため、差異の程度が複雑になっている。そこで、本稿では東京都特別区を中心に取り上げ文書管理規則等の内容を比較することにより現状分析を行った。その結果、以下の課題が明らかになった。第1に、文書管理規則等の設置背景がそもそも事務の効率化にあるため、情報公開や歴史的文書の保存を含めた文書のライフ・サイクルを保障するような内容でないということ、第2に、公立学校に特有の人事制度が原因で文書管理担当者が制度として確立されていないこと、第3に、公文書館が未設置であるために、文書管理規則等において移管先を指定することが不可能であることがあげられる。これらの現状を踏まえて、文書管理規則等を整備するための課題を提起する。