著者
市川 忠雄 大西 啓之 梅津 崇慎 市川 意子 野附 巌 中野 光志
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理研究会誌 (ISSN:09166505)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.53-61, 1994-10-25

青森県下の20戸の酪農家について、夏、秋、冬の3回100項目からなる「畜舎環境衛生改善調査表」を用いて調査を行なうとともに、このうちの4戸について温熱環境やアンモニアガス濃度測定を行なった。さらに、この4戸において2週間間隔で全搾乳牛の乳房炎検査を分房乳サンプルについてCMT変法で実施し、環境調査の得点と乳房炎検査成績との関係を検討した。20戸の環境調査の総合平均得点は65、66および67点とわずかだが調査ごとに改善がみとめられた。しかし、調査項目の中項目別に各配点数を満点としてその得点割合をみると、「搾乳の衛生管理」と「牛体の管理」が3回の調査ともに60%に達せず、他の中項目の得点割合と較べて低かったので、これらの項目を重点的に改善を計る必要が感じられた。朝搾乳前に測定した畜舎内外の温度差は、夏から冬へと季節か進むにしたがって平均0.3、1.7、3.6℃と大きくなったか、農家間に平均して1.4℃の違いか認められた。測定した4牛舎とも閉鎖型であるが断熱材は使用せず、夏季には開放部をできるだけ開放していたので、舎内風速も農家による違いが大きく、とくに夏季には6-0.3m/sと差があった。アンモニアガス濃度は平均して夏1.8ppm、冬4.2ppmであったが、舎内外の温度差が大きく舎内風速が低い農家で高かった。上記4戸における分房別乳房炎陽性率は、秋から冬にむかって全般的に低下の傾向を示したが、平均して4〜10%前後で推移した。全13回にわたる乳房炎検査成績を陽性反応の凝集程度とその発現頻度に応じてスコアー化し、農家ごとに1分房当たりの価として環境調査成績の平均得点と比較した。乳房炎スコアーが0.40と最も高かった農家の環境調査得点は57点と最も低く、逆にスコアーが最も低い農家は74点の得点であった。盲乳発生状況と畜舎構造、とくに牛床長の適否や牛繋留方式との関連について検討した。日本家畜管理研究会誌、30(2) : 53-61.1994.1994年6月8日受理