著者
奈良 信雄 加藤 拓馬 大西 宏典 田極 春美
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.135-142, 2017-06-25 (Released:2018-07-05)
参考文献数
11

昨今, ハンガリーの医学部で教育を受け, 卒業後に日本の医師国家試験を受験して日本で医師になることを希望する日本人学生が増えている傾向にある. 彼らがわが国で国民の信頼に応えることのできる医学教育を受けているかどうかは重大な関心事である. そこで, ハンガリーにあるセンメルワイス大学医学部, デブレツェン大学医学部を訪問し, ハンガリーの医学教育システムを調査した. ハンガリーには4大学医学部があり, すべてが国立で, 4大学ともにハンガリー人を対象としたハンガリー語コース, 外国人向けに英語で教育するインターナショナルコース, さらに3大学ではドイツ語コースもある. 医学教育はほぼ他のEU諸国に共通するが, インターナショナルコースでは完全に英語による教育でグローバル化に対応している, 少人数グループでのチュートリアル教育が充実している, 口頭試験での評価がある, 卒業試験だけでなく卒業論文も課せられる, 等の特徴があり, わが国の医学教育に参考になる点も少なからず認められた.
著者
大西 宏典
出版者
財務省財務総合政策研究所
雑誌
フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.181-205, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
46

公的介護制度における自己負担率については,わが国でも近年度々見直しの対象となる等,その政策的な重要性が増している一方,先行研究が限られており,自己負担の効果については未だ明らかになっているとは言い難い状況である。そこで本稿では,公的介護制度における自己負担率が,サービス利用や利用者の健康状態に与える効果について,先行研究のサーベイを行った。公的介護制度が整備されているフランス,オランダ,韓国,日本の先行研究の分析結果をまとめたところ,概ね自己負担の増加(減少)によってサービス利用が減少(増加)するという結果は一致しており,また,自己負担の変化が利用者の健康状態には有意な効果を与えていないことも,複数の研究で指摘されていることが分かった。他方,自己負担の変化に対する価格弾力性は,国・地域・制度・時期・サービス種別・利用者の属性等によって異なっていることも明らかになった。とりわけ,日本の介護保険において2015 年8 月に導入された2 割負担の効果は,諸外国の先行研究や,医療分野の先行研究と比べても極めて小さかったと考えられるが,今後の研究では,このように国によって,あるいは医療と介護の間で,自己負担の効果が異なるメカニズムについて,解明 していくことが重要な課題である。