- 著者
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徳岡 隆夫
大西 郁夫
高安 克已
三梨 昂
- 出版者
- 日本地質学会
- 雑誌
- 地質学論集 (ISSN:03858545)
- 巻号頁・発行日
- no.36, pp.15-34, 1990-11-30
- 被引用文献数
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中海・宍道湖の自然史を, 8葉の古地理図として示した。完新統堆積前には西の大社湾に注ぐ古宍道川と東の美保湾に注ぐ二つの水系が存在した。縄文海進はこれらの二つの水系にそってすすみ, 古宍道湾と古中海湾が形成された。縄文海進高潮期には古宍道湾の中央部が埋め立てられ, 東の水域は古宍道湖となり, やがて西の中海湾へと排水するようになり, 現在の中海・宍道湖の原型ができあがった。宍道湖宅はA.D. 1600年頃を境としてそれまでの汽水環境から淡水環境へと変わった。中海では環境変化が複雑だが, 米子湾でみるとA.D. 1600年頃までは出雲国風土記にも示されている夜見島の南に美保湾に通じる水道が断続的に存在したが, その後は閉鎖的環境が急速に進んだ。これらの環境変化は中国山地の人為的な荒廃による土砂の大量流出によって起こったが, 中世の温暖期をへて, A.D. 1600年頃を中心とする寒冷期にいたる地球規模の環境変化が背景となっているものと考えられる。^<210>Pb, ^<137>Cs年代測定および過去25年間の地形変化からそれぞれ求められた宍道湖での埋積量は約0.1/gr/cm^2程度であり, 中海ではその1/3と見積もられる。