著者
大谷 修一 仲田 直樹 石本 歩 秋枝 周子 風早 範彦 西森 靖高 中村 剛 依岡 幸広 立神 達朗 岩田 奉文 瀬古 弘 横田 祥
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.141-160, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
33

大雨の解析にアンサンブル予報解析システムを用いると,アンサンブルによる複数の再現結果から大雨と環境との相関や感度など,決定論的予測では得られない多くの知見が得られると期待できる.本論文では,広島県南部で観測史上1位を記録した2014年8月19~20日の大雨についてアンサンブル予報解析システムを用いて大雨の再現を行った.得られた20メンバーの中から再現性の良いメンバーと悪いメンバーとを選び比較することで,下層インフローなどの環境と降水量の環境を調べた.その結果,①湿った南風域が伊予灘から広島県南部に到達して大雨になった,②南風が強い場合に明瞭な線状降水帯が形成され降水量も大きくなった,③ストームに相対的なヘリシティーが大きい時に広島湾の下層水蒸気輸送量と広島の雨水混合比との間に正の相関がみられ,移流時間を考慮するとさらに相関が強くなる,④この事例では不安定指数(CAPEなど)と降水量の相関は弱く位置や時刻で大きく変動するため,不安定指数のみを用いた大雨の議論は注意が必要であることが分かった.