著者
草開 浩 小山 芳太 金森 恒雄 瀬古 弘
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.395-412, 2011-05-31

2008年7月28日に近畿地方を南西進した線状降水帯について,観測データの解析と数値予報モデルを用いた再現実験を行い,降水帯の成因と構造を調べた.この降水帯は,兵庫県・京都府・滋賀県の南部(近畿地方中部)で降水セルが列状に並んだ降水域と,兵庫県・京都府・滋賀県の北部(近畿地方北部)から南下した降水帯が合流して形成された.合流時の降水帯の形成機構では,近畿地方北部の降水帯からの冷気外出流が下層の収束を強化し,近畿地方中部の降水系の対流を強めたことが重要であった.また,同日に神戸市灘区の都賀川で発生した大雨は,神戸市西区上空で発生した降水セルが南東進し,急発達したものであった.降水エコーの急発達と下層の冷気外出流の到達が一致していたことから,近畿地方中部で発達した線状降水帯からの冷気外出流が急発達に深く関係していたことがわかった.
著者
足立 誠 瀬古 弘
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.826-830, 2009-10-31
参考文献数
1
被引用文献数
1
著者
吉崎 正憲 上清 直隆 瀬古 弘 高山 大 楠 研一 つくば域降雨観測実験グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-33, 1998-01-31
被引用文献数
5

1995年8月10日に関東平野で発生した雷雨について, 総観(1000km)・関東(100km)・雷雨(10km)の3つのスケールから, アメダス, 気象台や地方自治体の自記紙, 高層観測, ドップラーレーダーなどのデータを用いて調べた. 総観スケールの寒冷前線が関東地方を通る時に発生したので, 解析対象の雷雨は界雷型であった. しかし, この雷雨の発生や発達には, 総観スケールだけではなく関東スケールの風系も関与した. 関東平野の地上付近には3つの風系(非常に高温の南寄りの風I, 高温の北西寄りの風II, 低温の北東寄りの風III), およびその間には温度や風の不連続なシアラインが見られた. 雷雨は3つのシアラインが交差する付近で発生して, 風系IIIの中で発達・成熟した. それぞれの風系の気塊は温度・湿度・相当温位がほぼ一様でミニ気団的な特性を持っていた. 雷雨の最盛期には, 激しい降水による強い下降流とそれによる地上付近の顕著な外出流の雷雨スケールの流れが見られ, またそうした流れによってアーク状の雲が発生した. 風系IIIの寒気と北東風の生成について定量的な考察を行った. 寒気は風系IIIにあった別の雷雨の降水の蒸発の冷却効果などによって作られたものであり, 北東風は雷雨から吹き出すガストであったと結論された.
著者
立平 良三 瀬古 弘 鈴木 智広
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.633-642, 1998-08-31
参考文献数
9
被引用文献数
2

単一ドップラーレーダーのデータから風の場を推定するには, 解析領域内で風が一様とか線形といった仮定が必要である.台風に適した仮定としてはまず軸対称風系が考えられる.この場合は, 台風中心の周りの同心円上で風の流入角が一定となる.本論文ではさらに現実に近付けて「解析領域内で流入角はある曲線にそって一定」と仮定し, 同心円上では流入角が変化しうるようにした.この曲線は円弧で近似できるものとし, その曲率を求める手法をモデル風系を用いたシミュレーションによって導いた.モデル風系としてはランキン渦(最大風速50ms^-1)を基本とし, 流入角が台風中心の周りを波数3で最大±30°正弦関数的に変化するものを用いた.中心から65km離れたドップラーレーダーでモデル風系を観測した時の動径速度分布にこの手法を適用し, 風を推定したときの誤差ベクトルの大きさは, 絶対値の平均で約8ms^-1であった.一様風を仮定した場合の誤差は約41ms^-1であったから, 大幅な改善が達成されている.
著者
瀬古 弘 吉崎 正憲 楠 研一 つくば域降雨観測実験グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.93-103, 1998-02-28
参考文献数
13
被引用文献数
5

1995年8月16日, 東北地方を横切って東西に延びる寒冷前線が南下した時に, 関東地方で南西から北東に線状に並んだスコールラインが見られた。このスコールラインの成熟期の構造を, つくばのドップラーレーダー, アメダス, 気象官署や地方自治体(群馬県, 埼玉県, 栃木県, 茨城県)の観測データなどを用いて解析した。スコールラインの中では, 強い降水域が進行方向前面に並び, 後側に弱い降水域が広がっていた。スコールラインの移動に相対的な地上風の分布を見ると, 降水域では冷気外出流に伴う発散があり, その前面では前方からの暖かい風との収束がみられた。一方, 高度2〜4 kmの水平風をみると, 強い降水域では後方へ吹き出し, 弱い降水域では後ろからの乾いた空気の吹き込みが見られた。地上の気圧のメソスケールの変動を見ると, 降水域の前面で低圧, 強い降水域で高圧, 降水の止むところでは低圧であった。規模は小さいけれども, 本事例のスコールラインはアメリカ中西部や熱帯で見られるものとよく似た特徴を持っていた。
著者
瀬古 弘
出版者
気象庁
雑誌
気象庁研究時報 (ISSN:03685942)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-74, 2010
被引用文献数
1
著者
斉藤 和雄 瀬古 弘 川畑 拓矢 青梨 和正 小司 禎教 村山 泰啓 古本 淳一 岩崎 俊樹 大塚 道子 折口 征二 国井 勝 横田 祥 石元 裕史 鈴木 修 原 昌弘 荒木 健太郎 岩井 宏徳 佐藤 晋介 三好 建正 幾田 泰酵 小野 耕介
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

局地豪雨による被害軽減につながる基盤技術開発のための研究として以下を行った。・観測データを高解像度の数値モデルの初期値に取り込む手法(データ同化手法)の開発と豪雨事例への適用を行なった。衛星で観測するマイクロ波データ、GPSデータ、ライダー観測による風のデータを用いた同化実験などを行うとともに、静止衛星の高頻度観測データの利用に向けた取り組みにも着手した。・局地豪雨の発生確率を半日以上前から定量的に予測することを目標に、メソアンサンブル予報のための初期値や境界値の摂動手法の開発と雲を解像する高分解能モデルへの応用と検証を行い、局地豪雨の確率的予測の可能性を示した。
著者
津田 敏隆 堀之内 武 小司 禎教 瀬古 弘 河谷 芳雄 矢吹 正教 佐藤 一敏 川畑 拓矢 國井 勝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究はGPSや準天頂衛星による衛星測位データを大気科学に活用する「GPS気象学」の一環であり、以下の3課題を実施した。1) 小型低軌道(LEO)衛星を用いたGPS電波掩蔽により、高度分解能と精度が優れた気温・水蒸気プロファイルを解析する、2) GPS掩蔽データと地上GPS観測による可降水量データをメソ数値予報モデルに同化し予報精度向上を評価する、および3) GPS掩蔽データを用いて大気構造・擾乱の時間空間特性を解明する。
著者
斉藤 和雄 田宮 久一郎 青梨 和正 瀬古 弘 小司 禎教 川畑 拓矢 大関 誠 原 昌弘 柳野 健 中澤 哲夫 國井 勝 田中 博 古本 淳一 永戸 久喜 村上 正隆 田中 博 津田 敏隆 古本 淳一 若月 泰孝 林 修吾 露木 義 小泉 耕 西嶋 信 石川 宜広 本田 有機 三好 建正 経田 正幸 山口 宗彦 澤田 謙 酒井 亮太 米原 仁 小野 耕介 津口 裕茂 藤田 匡 三上 彩 近藤 圭一 劉 國勝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

集中豪雨を数値モデルで予測するため、大気の3次元的な状態を観測データを用いて精度良く解析する研究、および予測の信頼性を定量的に見積もる手法の研究を行った。非定時の観測データを同化する高解像度4次元変分法の開発、GPSデータ、マイクロ波放射計データ等の同化実験を行い、豪雨の予測が改善できることを示した。アンサンブル予報の手法をメソ現象の短時間予測に適用し、予報誤差を定量的に見積もる手法を示した。
著者
加藤 輝之 栗原 和夫 瀬古 弘 斉藤 和雄 郷田 治稔
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.719-735, 1998-10-25
被引用文献数
6

10km分解能気象研究所非静力学メソスケールモデル(MRI-NHM)が予想した降雨の精度検証を1996年梅雨期について行った。精度検証結果については気象庁の10km分解能静力学領域スペクトルモデル(RSM)の結果とも比較した。MRI-NHMには雲水、雨水を直接予報する暖かい雨タイプの降水スキームを用い、RSMでは2つの対流のパラメタリゼーションスキームを大規模凝結とともに用いている。MRI-NHMは1時間降水量1mm程度の小雨を僅かに過小に予測した一方、降水強度の最大値20mm以上の強雨の面積を相当に過大評価した。統計的なスコアを取ったところ、1時間降水量10mm以上の強雨についてはMRI-NHMの方がRSMより正確に予測していた。ただし、5mm以下の雨についてはMRI-NHMはRSM程成績は良くなかった。MRI-NHMは1時間降水量20mm以上の雨のほぼ半数を予想することができた。降水は九州北部より南部の方が精度良く予想されていた。このことは九州北部と南部とで強雨形成のメカニズムが異なるためだと考えられる。
著者
中井 専人 中村 健治 民田 晴也 瀬古 弘
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.27, 2002-03-29

平成13年度共同利用研究集会「降水システムと降水変動」(2001年8月23日, 研究代表者:渡辺明)講演要旨Variation of precipitation and rainfall system(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000))
著者
瀬古 弘 加藤 輝之 斉藤 和雄 吉崎 正憲 楠 研一 真木 雅之 「つくば域降雨観測実験」グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.929-948, 1999-08-25
被引用文献数
7

台風9426号(Orchid)が日本列島に接近した1994年9月29日に、関東平野にほぼ停滞するバンド状降雨帯が見られ10時間以上持続した。つくばにおける特別高層観測、2台のドップラーレーダーおよびルーチン観測のデータを用いて、この降雨帯を解析した。この降雨帯はニンジン形の雲域を持ち、バックビルディング型の特徴を持っていた。南北に延びた降雨帝はマルチセル型の構造をしていて、その中のセルは降雨帯の南端で繰り返し発生し, 西側に広がりながら北に移動した。水平分解能2kmの気象研究所非静水圧メソスケールモデルを用いて、数値実験を行った。メソ前線は実際の位置の約100km南東に形成されたが、バックビルディング型の特徴を持つニンジン型の形状のほぼ停滞する降雨帯が再現され、3時間以上持続した。セルが北西に移動すると共に降雨帯の東側で降水が強化されて、ニンジン形が形成されていた。降雨帯の形成メカニズムを調べるためにまわりの場と雲物理過程を変えて感度実験を行った。その結果、中層風の風上側からの高相当温位の気塊の供給と風の鉛直シアが重要であることがわかった。
著者
藤部 文昭 瀬古 弘 小司 禎教
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.777-786, 2003-10-31
被引用文献数
8

23年間のアメダス1時間値資料を使って,夏の午後に関東平野で発生する降水の分布と地上風系との関係を調べた.日最高気温が28℃以上で,午前中に降水がほとんどなく午後に降水のあった239日を対象にし,12〜24時の降水量分布をfuzzy c-means methodを利用して6つの型に分類した.このうち4つは主に北関東で降水がある型である.これらにおける14時の地上風系は,平野全体を南寄りの風がおおう"広域海風"を成すが,降水のない日に比べて平野中部の収束がやや大きい傾向がある.また,夕方以降になると北関東では北東風が吹く.この北東風は,降水に伴う冷却域からの北寄りの外出流と東寄りの海風とが重なったものと見なすことができ,かつ翌日にかけての総観的変化の1段階でもある.残る2つの降水型は,降水域が南関東に及ぶものである.そのうちの1つは東京23区に降水域の中心があり,14時の地上風系は鹿島灘から吹く東風と相模湾からの南寄りの風が東京付近で収束する状態になっている.