著者
吉田 裕俊 中井 修 黒佐 義郎 鵜殿 均 山田 博之 大谷 和之 山浦 伊裟吉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.247-252, 1994-03-25

抄録:腰椎椎間板内に生じる透亮像は,vacuum現象として知られているが,実際には同部は真空ではなく,ガスが存在しているとされている.その発生には,高度に変性した椎間板が関与しているとの報告があるものの,その発生の由来および病態については未だ不明のままである.そこで,腰椎椎間板内ガス像を認める椎間の画像診断上の特徴を検討し,椎間板変性との関係について言及すること,腰椎椎間板内ガスの由来及び病態を考察することを今回の研究目的とした.その結果,腰椎椎間板内ガス像を認める椎間には,椎間板腔狭小化が88%,脊髄造影で,椎間板膨隆が80%,CTで終板破壊が95%,MRI上,終板軟骨下骨輝度変化が76%に認められた.終板の破壊性変化部位に一致したガスの存在や,終板の欠損部にもガスが存在していることから,椎間板内ガスは腰椎伸展などにより生じた椎間板内陰圧部に,椎体内血液から終板を経由し発生したものと考えられた.
著者
大谷 和之 中井 修 黒佐 義郎 進藤 重雄 安部 理寛 北原 建彰 山浦 伊裟吉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.413-418, 1997-04-25

抄録:脊椎手術後の髄液漏の自然経過を明らかにする目的で,術後7日以上漏出が続いた14例,偽性髄膜瘤を形成した9例,胸腔内に髄液が貯留した8例の合計31例を調査した.発生率は脊椎手術1408例中2.2%で,平均漏出日数は19.4日(7日~57日)であった.全例が硬膜修復やくも膜下ドレナージを要することなく治癒した.偽性髄膜瘤や胸腔内貯留も数カ月以内に自然吸収された.感染は2例あり,1例は髄膜炎,1例は表在感染であった.長期化する髄液漏はすべて頚胸部での発症例であり,腰仙部で7日以上漏出が続いた症例はなかった.前方手術後の髄液漏は後方のものと比べ早期に閉鎖し偽性髄膜瘤を形成する傾向があった.治癒過程において漏出部とクモ膜下腔との圧の差が大きな役割を果たすためと考えられる.術後髄液漏は自然治癒傾向があり特に処置を施さなくとも問題となることは少ないが,その病態と治癒機序を考慮し体位による治療を行えば漏出期間の短縮が可能であろう.