著者
大谷 喜美江
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.82-92, 2009-09-10 (Released:2010-11-19)
参考文献数
18

ストレスや怒りの感情は,時に怒りをぶつける形のストレスコーピングとして表出され,この回避は重要である.一方,心身健康科学は心身相関に関し文化的視点を含め,Knowledge for well-beingの創出を目的とする.そこで本研究では聴取型音楽を用い,特に成人女性の「怒り」に及ぼす影響を検討した.また心身健康科学的観点から,育児ストレスコーピング法として聴取型音楽の有用性を類推した.方法は,乳幼児保護者を含む成人女性計43名を音楽使用・未使用の群に任意区分し,聴取有無別に気分変化をProfile of Mood States短縮版(以下POMS)を用い類推し,統計学的処理を経て分析を行った.結果,1.下位尺度「活気」の増加,「混乱」の減少,2.「怒る」「すぐかっとなる」の減少,3.音楽以外の要素も下位尺度,設問項目の一部の減少の効果を認めた.以上より聴取型音楽は成人女性の気分変容効果があり,怒りをぶつけるコーピング回避に有用と類推された.また心身健康科学の観点から,育児ストレスの解消においては適宜音楽聴取体験の活用が有用と考えられた.
著者
大谷 喜美江 冨澤 栄子 筒井 末春
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-9, 2016-02-01 (Released:2016-02-22)
参考文献数
35
被引用文献数
2

本研究の目的は,Daily Upliftsのレジリエンスへの影響を,日常いらだち事およびコーピングの特性を踏まえ検討する事である.方法は横断的質問調査であり,2014年5月に労働者1,300名へ電子メールで調査を依頼した.調査項目は,属性,レジリエンス尺度 (RS),日常いらだち事尺度 (DHS),コーピング特性簡易尺度 (BSCP),筆者作成のDaily Uplifts 30項目である.分析方法は,RS総得点を従属変数とした階層的重回帰分析で,属性,DHS総得点,BSCP下位尺度,Daily Uplifts項目を順次モデル1~4として投入した.調査回答者は502名であった.階層的重回帰分析の結果,高いレジリエンスへの有意な独立変数は,BSCPの問題直接解決・視点切替,Daily Upliftsの,楽しい・嬉しい・心地が良い出来事の想像,友人や仲間とのコミュニケーション,暮らしに滞りがない,が含まれた.労働者のレジリエンスは,Daily Upliftsと関係しており,特に労働者の心のヘルスプロモーションへの活用可能性が示唆された.