- 著者
-
大野 備美
納口 るり子
- 出版者
- 全国農業構造改善協会
- 雑誌
- 農業経営研究 (ISSN:03888541)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.3, pp.79-84, 2013
企業による農業参入数は年々増加している。図1は,農地リース方式により参入している一般法人数(累積)の推移である。2003年の構造改革特別区域法において貸借が始まってから順次増加傾向にあるが,2009年の農地法改正により,貸借できる農地の限定がなくなったため,急速に参入が増加している。図2で,農地リース方式を利用して参入している法人を業務形態別に見ると,食品関連企業が中心を占めている。室屋によれば,食品関連企業の中でも,2003年に阪急百貨店,2008年にイトーヨーカドーと東急ストア,2009年にイオンと,大手小売が続々と農業に参入している。このように存在感の増している小売業の農業参入事例はマスコミでも大きく取り上げられている。なかでも小売り最大手であるイオンやイトーヨーカドーの事例は,小売業の農業参入における先進事例として多くの論文に取り上げられている。既往研究では,イトーヨーカドーの法人形態や生産・販売体系を明らかにしたものとして仲野,山本,渡邊,両社の参入形態を明らかにしたものとして山本,両社の事例を参入形態別に分類したものとして渋谷が挙げられる。これらの研究では,両社がどのような形態で参入しているかが明らかにされており,両社の参入形態には大きな違いがあることが指摘されている。しかし,この参入形態がどのような参入目的に基づいて選択されたのか,さらには参入目的に照らして参入形態をどう評価すべきかという点について,比較分析を行った文献はない。そこで本論文では,これらの既往研究をもとに,両社の参入形態が異なる理由に着目する。そして参入目的と参入形態との関係性を明らかにし,両社の参入形態が農業参入目的に即したものであるか一定の評価を加えること目的とする。