著者
千葉 有 渋澤 洋子 五十嵐 治義 大野 朝也
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.91-101, 2000

ラックカイガラムシより分泌される樹脂状物質はセラックと呼ばれ, 各種工業製品や食品の光沢剤として広く利用されている。本研究では, セラックが形成する被膜は耐酸性に優れ, 毒性がないとされることから, セラックで歯牙の表面をコーティングした場合の歯垢付着抑制効果と, う蝕抑制効果を塩化セチルピリジニウム (CPC) を併用した場合も含めて動物モデルを用いて検討した。その結果, 0.5%セラックの単独薬液および0.2%または0.5%セラックとCPCを併用した薬液では歯垢の付着抑制効果が, 0.5%セラックとCPCを併用した薬液ではう蝕抑制効果が, それぞれ歯種によっては認められた。<BR>以上よりセラックの長期投与は, 歯垢の付着抑制に有効であることが示唆された。一方, う蝕抑制効果についてはセラック単独では抑制力は低いが, CPCの作用を著しく増強させることが示唆された。
著者
高田 訓 根本 隆一 滝沢 知由 沼崎 浩之 大野 朝也
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.35-41, 1996-01-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20

これまで高齢者の未手術口蓋裂の鼻咽腔閉鎖機能を検索した報告は少なく,更に無歯顎者の鼻咽腔閉鎖不全症患者に発音補整装置を装着し治療を行った報告は殆どない.今回我々は,78歳の女性で無歯顎の口蓋裂未手術例に対し,スピーチエイドに類似した全部床義歯を装着し,装着前後の鼻咽腔閉鎖機能について検索した.その結果,1)Blowingでは呼気流量で約50%,呼気流出時間で約25%,最大呼気流量速度(PF)では約63%増加した.2)ファイバースコープ所見では,子音の一部で鼻咽腔閉鎖が認められるようになった.3)語音発語明瞭度は29.0%から58.0%に改善し,患者の十分な満足を得ることができた.