著者
住田 佳代 五十嵐 芳暢 鳥塚 尚樹 松下 智哉 阿部 香織 青木 幹雄 漆谷 徹郎 山田 弘 大野 泰雄
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第37回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.246, 2010 (Released:2010-08-18)

【目的】ジメチルスルホキシド(DMSO)は細胞を用いたアッセイにおいて脂溶性の化合物を添加するときによく用いられる。しかし,DMSOはその濃度が高くなると, 細胞毒性を呈することが知られており,DMSOの細胞に対する種々の影響をよく踏まえておくことが必要である。今回,我々はDMSOがヒト凍結肝細胞の遺伝子発 現に与える影響を検討した。 【方法】1.2x106個のヒト凍結肝細胞を6ウエルプレートに播種し,4時間後に培地交換した後,さらに20時間培養した。0,0.1,0.5,0.75,1,2%(v/v)DMSOを 含む培地に交換し,24時間培養した。細胞播種から48時間後に培地及び細胞の全RNAを回収した。培地内のラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定し,細胞 毒性を評価した。また,HGU133Plus2.0アレイ(アフィメトリックス社,約55,000プローブ搭載)を用いて網羅的遺伝子発現解析を行い,DMSOの影響を検討した。 【結果】LDH活性を指標とした細胞毒性は,DMSO濃度2%(v/v)まで認められなかった。遺伝子発現データを解析した結果,DMSO濃度0.75%(v/v)において,2倍 以上あるいは1/2以下の発現変動を示した遺伝子数はそれぞれ11個,46個と少なかった。また,薬物代謝酵素の発現への影響を解析した結果,大半の酵素に関して, DMSO濃度0.75%(v/v)までは発現変動の振れ幅が1標準偏差内に収まり,大きな影響は認められなかった。今回得られた結果を総合的に考察すると,少なくとも DMSO濃度0.5%(v/v)までは遺伝子発現データに大きな影響を与えないことが示唆された。現在,ラット初代肝細胞を用いてDMSOの影響を検討中であり,合わせ て報告したい。
著者
大野 泰雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.325-329, 2005 (Released:2005-08-01)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

薬理学は薬物の生体作用とその機序を明らかにすることを主要な目的とする学問であり,そのための多くのin vitro試験方法が開発されてきた.一方,動物愛護の立場からも生命科学研究に用いる試験法をなるべく動物を使用しない方法に置き換え(Replacement),使用動物数を削減し(Reduction),動物に与える苦痛を少なくする(Refinement)という3Rの原則が求められている.1999年にボロニアで開催された生命科学のための動物使用と動物実験代替法に関する世界会議でボロニア宣言が採択され,3Rの原則を法律に組み込むこと,動物実験に関係する全ての者に教育や訓練を行う機構を設置すること,また,動物実験の科学的,倫理的妥当性を審査委員会で審査を受けるべきと勧告された.なお,薬理学会員の所属する施設での動物実験委員会の設置や倫理的な動物実験の教育には施設により差がある.第三者による評価が必要であろう.一方,動物実験代替法の開発とバリデーションを促進するため,EUではEuropean Center for the validation of Alternative Methods(ECVAM)を1994年に,米国ではInteragency Coordinating Committee on the Validation of Alternative Methods(ICCVAM)を1993年に設立した.わが国においても平成17年度予算で国立医薬品食品衛生研究所に代替法を中心とする新規安全性試験法を評価するための室が認められた.