著者
大鋸 順
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、Jリーグのクラブチームの一つである川崎フロンターレと川崎市商店街を例にし、協働の可能性、協働による効果について究明し、豊かで潤いのある地域形成の実現可能性を検証するものである。研究結果の概要は、次の通りである。1.フロンターレの設置が地域の人々に与えた影響は少なく、また、商店街の人々のフロンターレに対する関心・愛着についても高いものではなかった。このことはフロンターレが地域の文化セクターとして機能しているとは思えないことを示している。2.フロンターレに対する応援状況では、「個人としての応援」「商店としての応援」「商店街としての応援」のいずれも高いものではなかった。また、応援を得るためのフロンターレの条件としては、「チームが強くなる」「テレビなどのメディア露出が増加する」「地元を大切にするチームになる」等があげられていた。幸い、フロンターレは2005年度からJ1に昇格し、メディア露出も期待される。この意味で、2005年シーズンは、フロンターレにとって重要なシーズンである。3.人々のフロンターレに対する地域文化セクターとしての期待は大きく、「町への愛着が増える」「子供達が誇りをもつようになる」「人々が町を誇りに思う」「楽しみが増え生活に潤いがでる」「若い人が集まる町になる」「商店街に活気がでる」などの項目に現れていた。4.千葉ロッテマリーンズ、東京ヴェルディなどのプロスポーツチームのフランチャイズの川崎市から他都市への移転については、多くに人々が残念に思っていることが現れていた。以上、今回の調査時点において、フロンターレが地域文化セクターとして機能しているとは言い難い状況である。しかし、人々のフロンターレに対する期待は大きく、地域文化セクターとして十分機能すると考えられる。そのためには、フロンターレ自らの努力は必要であるが、フロンターレだけにそれを求めるべきではない。「自分たちの街をどのようにするか」という理念のもとに、フロンターレと商店街との協働、フロンターレと行政との協働、あるいは他の地域セクターとの協働等地域のあらゆるセクターが協働し、地域全体で育てていくことが必要である。
著者
木村 和彦 大鋸 順
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

Jリーグチームの誘致が、ホームタウンの住民の運動生活や個人生活および地域に与えた影響を明らかにするために、茨城県鹿嶋市の住民と対象として質問紙による調査を実施し、平成6年度調査と比較検討した。また同様の調査(一部修正)を、Jリーグチームを誘致している千葉県柏市、市原市、埼玉県浦和市および静岡県清水市の住民を対象として実施し、比較検討した。それぞれの調査の概要および結果の概要は以下の通り。1. 鹿嶋市調査(1) 調査内容a.サッカー活動への影響 b.運動生活全般への影響 c.スポーツ観戦への影響 d.支援ボランティア活動への影響 e.個人生活や地域生活への影響、など(2) 調査時期および調査方法(省略)有効標本507 回収率23.8%(4) 結果の概要(特に平成6年度調査と比較して)サッカー活動への影響としては、16〜24歳までの比較的若い年齢層の実施率の低下がみられた。サッカー実施欲求、サッカークラブ参加率ともに低下傾向がみられた。運動生活全般としては、約1割の人がJリーグがきっかけで以前より運動頻度や運動欲求が増加したと回答している。運動実施種目ベスト10にはほとんど変化がなかった。スポーツ観戦について、アントラーズの試合を観戦したことのある人は、78.5%で前回調査より8.7ポイント増加し、住民の約8割の人が観戦経験を持っていた。Jリーグの競技場での観戦欲求は、男性では24歳以下、女性では39歳以下の年齢層で著しく低下しており、比較的若い層の欲求の低下が認められた。支援ボランティア活動として、私設応援団への加入率が特に24歳以下の女性で大きく減少している。4.3%の人が運営ボランティア経験を有しており、次第に増加してきている。個人生活への影響では、「町への愛着が増した」「家族共通の話題が増えた」「生活の楽しみが増えた」という順に肯定的な回答が多く、地域への影響では、「鹿嶋市の知名度が向上」「市民間の共通の話題が増えた」「鹿嶋市のイメージが向上」「地域の連帯感が増した」といった項目で肯定的な回答が多かった。2. 柏市、市原市、浦和市、清水市の調査(1) 調査内容は、鹿嶋市と同様。(2) 調査時期平成10年2月〜3月(3) 調査方法地域版電話帳をもとに、各市から1,000名を無作為抽出し、郵送自記法による調査(有効標本616回収率15.7%)。平成8年度の鹿嶋市調査と平成9年度の4都市調査を一括して分析したところ、サッカーへの参加、サッカー欲求、競技場での観戦および観戦欲求、個人生活や地域への影響に関しても、鹿嶋市が最も大きな影響を受けたことがかわった。しかし個人生活や地域への影響に関しては、高い割合を示す項目は5都市間でほぼ共通していた。
著者
大鋸 順
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.65-73, 1998

本研究は、Jリーグクラブチームの設置による地域活性化の可能性を確かめるものである。鹿島町は鹿島臨海工業地帯として発展し、経済的基盤は確立されたが、人々の地域生活を豊かなものにするインフラは必ずしも充分ではなかった。このために、鹿島町は隣接する市町村と鹿島臨海工業地帯の企業とともに鹿島アントラーズFCを設立した。1993年に開始されたJリーグは、日本全体に大きなインパクトを与えた。本研究は、鹿島町の人々の生活にも大きな影響を与えていることを確認した。