著者
太田 泰雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.179-183, 1962-10-05
被引用文献数
2

1.トウガラシ辛味成分。apsaicin分泌器官,貯蔵器と辛味の分布および単為結果と辛味の関係について,Capsicum annuum Lに属する4品種を用いて調べた。2.鷹の爪×LargeBell F_1について,貯蔵器と分泌組織を組織学的ならびに顕微化学的に調べた。貯蔵器は長経約O.3〜1.0mmの楕円彩または円形の油泡状で,隔壁と胎座に分布する(第1図)。3.分泌組織は隔壁の表皮組織の一部が二次的に分裂して生じた,縦長で内容に富む細胞群で,capsaicinをその外膜とクチクラの間の小空間(貯蔵器)に分泌する(第2図)。4.鷹の爪×LargeBell F_l,伏見甘長,および大獅子について,果皮,種子,および胎座と隔壁の3部,または果実の頂部,中央部,および基部の3部にわけ,各部のcapsaicin含量を測定した(第1〜3表および第3図)。いずれのぱあいも,胎座と隔壁は果皮および種子に比べてきわめて高い含有率を示した。果皮および種子に若干の辛味成分が認められるのは,隔壁または胎座に分泌された。apsaicinの一部が飛散附着したためと思われる・5.鷹の爪4xの単為結果による無種子果,自然受粉による有種子果,および有種子果から種子を除去した試料についてcapsaicin含有率を測定した(第4表)。capsaicinの分泌は種子の有無と無関係であると考えられた。終りに臨み,終始懇篤な御指導を賜った木原生物学研究所長木原均博士,御鞭縫を頂いた国立遺伝学研究所松村清二博士,たらびに有益た御助言を賜った京都大学教授西山市三博士に深甚な謝意を表する。
著者
太田 泰雄
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.169-175, 1962
被引用文献数
1 3

1. トウガラシ辛味の遺伝について, 定量的研究をおこなった。辛味成分 capsaicin の定量は閾値法による簡便法を考案し, これによった (Table 1)。<br>2. 甘親として <i>C. annuum</i> の大獅子 (P<sub>1</sub>, capsaicin 含有率0.05%) と伏見甘長 (P<sub>2</sub>, 0.05%), 辛親として八房 (P<sub>3</sub>, 0.25%), 鷹の爪 (P<sub>4</sub>, 0.30%) および <i>C. frutescens</i> Ac 1443 (P<sub>5</sub>, 1.00%) を用いた。<br>3. 甘(♀)×辛(♂)の交雑でえた果実の測定から, メタキセニア現象は認められなかった(Table 2)。<br>4. 甘×辛のばあい, 正逆交雑で差は認められない。F<sub>1</sub> は辛親と同じ程度の辛さ, F<sub>2</sub> および BF<sub>1</sub> では甘親程度から辛親よりさらに辛いものまで分離し, その度数分布は二頂曲線となる (Tables 3, 4 および Figs. 2, 3, 5)。<br>5. 辛×辛のばあい, F<sub>1</sub> はより辛い親と同じ程度の辛さ, F<sub>2</sub>, BF<sub>1</sub> および BF<sub>2</sub> は巾の広い連続変異を示す (Table 5 および Fig 6)。<br>6. 以上の結果, トウガラシの辛味に関して単純な分離は認められず, さらに多数の個体を用いて実験をおこなう必要がある。