著者
奥 輝明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.904, 2018 (Released:2018-09-01)
参考文献数
5

結核(tuberculosis:TB)は,マイコバクテリウム属結核菌群(Mycobacterium tuberculosis, M. bovis 等)に起因する最も古くから知られる感染症の1つである.また,ヒトの単一感染性菌による全世界の死因第1位であり続けており,現在も世界規模の主要な公衆衛生問題である.結核予防に用いられるカルメット-ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin:BCG)ワクチンはM. bovis を長期継代培養することで弱毒化した生ワクチンであり,実用化されている唯一の結核予防ワクチンである.BCGワクチンの効果は,乳幼児結核,結核性髄膜炎や粟粒結核など重症結核において認められるが,成人の肺結核に対しては部分的であることから,新規ワクチンの開発が望まれている.本稿では,アカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)ベクターワクチンを用いた結核菌感染研究において,長期間のワクチン効果を認めたHansenらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Hansen S. G. et al., Nat. Med., 24, 130-143(2018).2) Hansen S. G. et al., Nature, 473, 523-527(2011).3) Hansen S. G. et al., Nat. Med., 15, 293-299(2009).4) Hansen S. G. et al., Science, 340, doi:10.1126/science.1237874(2013).5) Ranasinghe S., Walker B. D., Nat. Biotechnol., 31, 811-812(2013).