著者
髙瀬 義昌 奥山 かおり 野澤 宗央 水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.675-678, 2018-10-25 (Released:2018-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

地域包括支援センターからの連絡で訪問診療を開始し治療に結びついた超高齢発症の遅発パラフレニーの症例を経験した.症例は94歳,女性.被害妄想や幻聴を呈した.近隣と騒音を巡ったトラブルや食思不振などがあり治療が必要だったが,外来受診の拒否が強く自力での通院が困難であったため,訪問診療が開始された.オランザピン2.5 mg/日を使用し改善を認めた.在宅医療では限られた資源と診療時間の中で,より精緻な鑑別診断と治療のアプローチが必要となる.高齢者に幻覚・妄想などの精神症状が出現することは臨床的にはよく知られているが,在宅医療現場では患者・家族やそれに関わる多職種にはよく知られておらず,見過ごされたまま対応に苦慮しているケースも少なくないと考えられる.今後更なる高齢化に伴い,在宅医療でも高齢者の精神疾患に対応しなければならない状況が増加すると推測される.超高齢社会の日本において,地域で高齢発症の遅発パラフレニーをいかに理解し継続支援していくのか,在宅医療・介護の推進にあたっての喫緊の検討課題であると考える.