著者
小林 好信 水上 勝義
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.373-382, 2021-12-01 (Released:2021-11-18)
参考文献数
50

The purpose of this study is to clarify psychological factors related to recovery from sports injuries in judo and track and field. A questionnaire survey was conducted with male and female university judo players (n=944) and track and field athletes (n=645), who were identified using the snowball sampling. The questionnaire included the following items; the state of sports injuries, individual traits, coping resources, health related issues, stress responses and emotional supports. The questionnaire was conducted twice within a one year interval. Responses of participants with sports injuries were analyzed in the first survey (judo: n=190, track and field: n=111). Psychological factors in the recovery group and the non-recovery group were compared between the first and second survey and between groups by a two-way repeated measures ANOVA. In judo, there was a main effect between the groups of interpersonal dependency, stress responses “irritability-anger” and health management confidence (p< .05). In addition, there was an interaction effect between acquired resilience and emotional support from coaches (p< .05). In track and field, there was a main effect between the groups of stress responses “depression-anxiety” and “helplessness”, and between the time point of interpersonal dependency (p< .05). The results of this study suggested that while there were similarities in psychological factors between judo and track and field, the effects differed based on the type of sport, and that measures appropriate to the type of sport were required for psychological support when returning to the sport.
著者
崔 元哲 水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.441-449, 2020-10-25 (Released:2020-12-01)
参考文献数
29
被引用文献数
5

目的:高齢者の心身の健康増進に運動が奨励されているが,運動実施が困難な高齢者も少なくない.音波による全身振動刺激(Sonic Wave Vibration,以下SWVと略す)は,振動板の上で一定時間立位を保持することで,歩行や下肢筋力への効果が報告されている.本研究は,SWVの気分,認知機能,自律神経機能,安静時エネルギー消費量に対する効果を明らかにすることを目的とした.方法:24名の後期高齢者(平均年齢88.0±5.0歳)をSWV実施群と対照群に無作為割り付けし,SWV群は1日10分,週5日,2カ月間SWVを実施し,測定結果を対照群と比較した.結果:SWV直後に,二次元気分尺度において,安定度・快適度は有意に上昇し,同時に測定した心拍変動では副交感神経活動の指標が有意に上昇し,交感神経活動の指標が有意に低下した.また安静時エネルギー消費量は有意に増加した.2カ月後SWV群は,ストループBの遂行時間が有意に短縮し処理速度の向上が認められた.またストループ課題実施時の酸素化ヘモグロビン濃度と総ヘモグロビン濃度はSWV群に有意に上昇した.期間中特に有害事象は認めなかった.結論:SWVは高齢者に安全に実施可能なこと,実施直後に気分やストレス改善効果が得られること,継続的に実施することで認知機能や脳機能に影響する可能性が示唆された.
著者
水上 勝義 畑中 公孝 田中 芳郎 朝田 隆
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.655-660, 2006-09-20
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

精神症状および行動障害 (behavioral and psychological symptoms of dementia: BPSD) を呈し, それらの症状に抑肝散が奏効したアルツハイマー型認知症 (AD) の5例を報告した。我々の症例では, 5例全例に易怒性, 興奮を認め, 4例に攻撃的言動, 不眠を, 3例に俳徊を認めた。いずれの症例に対しても抑肝散は比較的早期から効果を認め, また明らかな副作用は認めなかった。我々の検討から, 抑肝散はADでみられる易怒性, 興奮, 攻撃性などに効果的であり, また安全な治療薬と考えられた。また夜間不眠や俳徊を認める例, 抑うつ状態と易怒性, 興奮を共に認める例, 歩行障害や尿失禁などの身体症状を伴う例など, 向精神薬による治療が困難な例に対して, 抑肝散は特に重要な治療薬の一つと考えられた。
著者
宮崎 さやか 山田 静雄 東野 定律 渡邉 順子 水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.301-311, 2019-07-25 (Released:2019-07-31)
参考文献数
27

目的:高齢者の排尿障害にはポリファーマシーが関連すると言われているものの,ポリファーマシーによる排尿障害のリスクに,薬剤数あるいは種類のいずれが影響するのかは明らかではない.また薬剤と排尿障害の関連について,尿失禁のタイプ別に検討した報告はきわめて少ない.本研究では,これらの点を明らかにすることを目的とした.方法:在宅医療受療中の65歳以上で要介護1~5いずれかの認定を受け,処方薬5剤以上,抗がん剤による加療を受けていない者を対象とし,訪問看護ステーションに質問紙調査の回答を依頼した.また,排尿チェック票を用い排尿症状を判別した.結果:167名(女性97名,男性70名,平均年齢83.8歳)を分析対象とした.5~9剤処方が59.3%,10剤以上が40.7%であり,男性の10剤以上で,排尿障害のリスクに有意傾向を認めた.排尿障害と薬剤の種類の関連については,女性の場合,腹圧性尿失禁では,αアドレナリン受容体拮抗薬が,切迫性尿失禁ではベンゾジアゼピン系薬剤が有意なリスクであることが示された.機能性尿失禁では,αアドレナリン受容体拮抗薬が有意なリスク低下を認め,コリンエステラーゼ阻害薬は有意なリスクであることが示された.αアドレナリン受容体拮抗薬とベンゾジアゼピン系薬との併用で,腹圧性および切迫性尿失禁のリスクはそれぞれ単剤投与時より高値を示した.またαアドレナリン受容体拮抗薬とコリンエステラーゼ阻害薬の併用で,腹圧性尿失禁のリスクが著明に高まることが示された.男性ではいずれの排尿障害に対してもリスクとなる薬剤は抽出されなかった.結語:本研究結果より,薬剤による排尿障害には男女差がみられる,排尿障害のタイプによって関連する薬剤が異なる,リスクのある薬剤の併用によりリスクが著明に高まるなどの可能性が示唆された.
著者
小林 好信 水上 勝義
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.148-159, 2019-09-30 (Released:2019-12-21)
参考文献数
43
被引用文献数
1

目的:柔道と陸上競技において,スポーツ傷害の重症度に関連する心理社会的要因を明らかにする。方法:機縁法による男女大学柔道選手793人と陸上競技選手655人を対象に,スポーツ傷害の状況や競技成績,個人特性,対処資源,健康に関する事項,ストレス反応に関するアンケート調査を1年間の間隔をおき2時点で行った。初回調査時に傷害のない柔道選手222人と陸上競技選手191人を分析対象として,1年後の受傷の状況を目的変数(非受傷群/軽症群/重症群),標準化した初回調査の心理社会的要因を説明変数として,性,年齢,競技成績,過去の傷害の罹患期間にて調整した多項ロジスティック回帰分析を各競技にて行った。結果:1年後の調査で軽症と重症の傷害発生は,柔道が40人(18%)と20人(9%),陸上競技が14人(7%)と18人(9%)であった。多変量解析の結果,非受傷群と比した調整後オッズ比[95%信頼区間]は,柔道の軽症群にて本来感 .49[.27-.90],重症群にて獲得的レジリエンス2.26[1.03-4.98],問題解決型行動特性2.86[1.30-6.27],メンタルヘルス不良3.26[1.41-7.54]であった(p <.05)。同じく,陸上競技の軽症群にて健康管理の自信感 .32[.13-.77],重症群にて資質的レジリエンス .36[.14-.91],獲得的レジリエンス2.60[1.08-6.25]であった(p <.05)。結論:傷害の発生要因は,競技種目や重症度により異なり,また両競技とも獲得的レジリエンスは,重症傷害の発生リスクを高めることが示唆された。
著者
髙瀬 義昌 奥山 かおり 野澤 宗央 水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.675-678, 2018-10-25 (Released:2018-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

地域包括支援センターからの連絡で訪問診療を開始し治療に結びついた超高齢発症の遅発パラフレニーの症例を経験した.症例は94歳,女性.被害妄想や幻聴を呈した.近隣と騒音を巡ったトラブルや食思不振などがあり治療が必要だったが,外来受診の拒否が強く自力での通院が困難であったため,訪問診療が開始された.オランザピン2.5 mg/日を使用し改善を認めた.在宅医療では限られた資源と診療時間の中で,より精緻な鑑別診断と治療のアプローチが必要となる.高齢者に幻覚・妄想などの精神症状が出現することは臨床的にはよく知られているが,在宅医療現場では患者・家族やそれに関わる多職種にはよく知られておらず,見過ごされたまま対応に苦慮しているケースも少なくないと考えられる.今後更なる高齢化に伴い,在宅医療でも高齢者の精神疾患に対応しなければならない状況が増加すると推測される.超高齢社会の日本において,地域で高齢発症の遅発パラフレニーをいかに理解し継続支援していくのか,在宅医療・介護の推進にあたっての喫緊の検討課題であると考える.

1 0 0 0 OA BPSDの薬物療法

著者
水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.19-26, 2011-01-15 (Released:2014-10-11)
参考文献数
37

認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する薬物療法について述べた。薬物療法を施行する前に,BPSDの多くは非薬物療法で改善するため,まずは非薬物療法を十分に行うことが重要である。その結果,改善が得られない場合に薬物療法が行われる。薬物療法では安全性への配慮が最も大切であり,副作用によって認知機能や身体機能の低下を来さぬよう注意する。本稿では,うつ,アパシー,幻覚,妄想,興奮,易刺激性,せん妄などの薬物療法についても例示した。アルツハイマー型認知症の治療薬であるドネペジルは,認知機能改善のみならず,BPSDのいくつかの症状に対しても効果を認める。したがってBPSDに対して薬剤を追加する前に,まずドネペジルの効果を評価する。また抗精神病薬を使用する前に,代替治療薬の可能性を検討することも有用である。特に漢方薬はBPSDに対する有力な選択肢の一つである。薬物療法が奏効すると,患者と家族の心理的苦痛を軽減し,家族関係の改善ももたらす。したがって安全に配慮した適切な薬物療法は認知症の診療に有用といえる。
著者
秋下 雅弘 寺本 信嗣 荒井 秀典 荒井 啓行 水上 勝義 森本 茂人 鳥羽 研二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.303-306, 2004-05-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
10
被引用文献数
12 22

高齢者では臓器機能の低下や多剤併用を背景として薬物有害作用が出現しやすいとされるが, その実態はよく知られていない. そこで, 大学病院老年科5施設の入院症例について, 後ろ向き調査により薬物有害作用出現頻度と関連因子について解析した. 2000年~2002年の入院症例データベースから薬物有害作用の有無が記載された症例を抽出し, 総計1,289例を解析に用いた. 主治医判定による薬物有害作用出現率は, 5施設全体で9.2%, 施設別では6.6~15.8%であった. 薬物有害作用の有無で解析すると, 多疾患合併および老年症候群の累積, 多剤併用, 入院中2薬剤以上の増加, 長期入院, 緊急入院, 抑うつ, 意欲低下が有害作用出現と関連する因子であった. 以上の結果は, 従来の単施設でのデータを裏付けるものであるが, 今後の高齢者薬物療法における参照データとなりうる. 関連因子については, 有害作用の予防および影響の両面から高齢者薬物療法に際して注意していく必要がある.
著者
秋下 雅弘 荒井 啓行 荒井 秀典 稲松 孝思 葛谷 雅文 鈴木 裕介 寺本 信嗣 水上 勝義 森本 茂人 鳥羽 研二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.271-274, 2009 (Released:2009-06-10)
参考文献数
9

目的:日本老年医学会では,2005年に「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」を含む「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を発表した.このような薬物有害反応(ADR)を減らす取り組みにはマスコミも関心を持ち,今般,同ガイドライン作成ワーキンググループとNHKは共同で,老年病専門医に対してADR経験と処方の実態を問うアンケート調査を行った.方法:2008年9月,学会ホームページに掲載された全ての老年病専門医(1,492名)の掲載住所宛にアンケートを郵送した.質問項目は,1)この1年間に経験した高齢者ADRの有無(他機関の処方含む),2)上記リスト薬からベンズアミド系抗精神病薬,ベンゾジアゼピン系睡眠薬,ジゴキシン(≥0.15 mg/日),ビタミンD(アルファカルシドール≥1.0 μg/日)および自由追加薬について,過去のADR経験頻度,3)ADR予防目的による薬剤の減量·中止の有無,4)課題と取り組みについての自由意見,とした.結果:回答数425件(29%).1)1年間のADR;72%.2)過去のADR;ベンズアミド79%(稀に54%,よく25%,以下同),ベンゾジアゼピン86%(62%,24%),ジゴキシン70%(61%,9%),ビタミンD 37%(33%,4%).自由回答では,非ステロイド性消炎鎮痛薬が最も多く,降圧薬,抗血小板薬,抗不整脈薬,血糖降下薬,抗うつ薬が次いだ.3)ADR予防目的の減量·中止93%.4)自由意見;ADRに関する医師·患者の啓発活動,老年病専門医の養成,多剤処方回避の指針作りやシステムの確立を挙げる意見が多かった.結語:老年病専門医はADRをよく経験する一方,多くは予防的対策を講じている.今回の意見を,新しい指針作りや啓発活動に生かすべきである.
著者
水上 勝義
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アルツハイマー病(AD)の神経細胞保持に関連すると推察されるユビキリンとブチリルコリンエステラーゼについて剖検脳海馬を用いて免疫組織化学的検討を行った。ユビキリンはAD病理に対して抵抗性を示す海馬CA2-4領域の神経細胞内で増強した。ブチリルコリンエステラーゼもAD海馬の同部位において神経細胞内とニューロピルで増加した。これらの変化は、AD病理に対する抵抗性を関連する可能性が推察される。今後はこれらの変化と興奮毒性との関連について明らかにする必要がある。
著者
水上 勝義
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2009-2011