著者
松本 綾希子 奥山 絢子 後藤 温 町井 涼子 祖父江 友孝 高橋 宏和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.903-907, 2022-11-15 (Released:2022-12-17)
参考文献数
8

目的 新型コロナウイルス感染症の流行ががん患者の受療状況に与えた影響とその理由の評価。方法 2021年12月10-13日にインターネットによるアンケート調査を実施した。対象は40-79歳の男女とし,予備調査と本調査の二段階で調査を行った。調査会社が保有するパネルメンバーのうちがん疾患ありと登録されている5,000人に予備調査を行い,現在治療中または経過観察中のがん患者に本調査への参加を依頼した。本調査の項目は,通院や治療日程の変更の有無,変更内容,変更理由,病院にかかることに対する抵抗感,今後の希望通院方法・頻度の5項目とした。2020年4月から2021年12月までの状況を対象とした。結果 1,920人から回答を得た。新型コロナウイルス流行の影響で通院や治療日程が変更となったのは13.8%であった。変更になったものは主に通院日や方法(144人),治療の日程(87人),診断から治療開始まで時間がかかった(44人)などであり,日程変更があった治療内容は手術またはカテーテル治療(55人),点滴の抗がん剤治療(28人),放射線治療(22人)などであった。変更の理由は,感染の機会を減らすために医療機関から変更を提案された(49.6%),医療機関がコロナ対応に専念するため(27.3%),自分の感染が心配だったので自分から変更を申し出た(17.0%)などであった。変更の有無については診断時期による影響が大きく,2020年4月以降にがんと診断された人では19.9%だが,それ以前に診断された人では11.9%であった。居住地によって変更割合に差はなかった。結論 新型コロナウイルス感染症流行ががん患者の受療状況に影響を与えていたことが示唆された。今後も引き続き長期的な影響について調査を継続する必要がある。
著者
奥山 絢子 片野田 耕太 田淵 貴大
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.204-214, 2022-03-15 (Released:2022-03-23)
参考文献数
19

目的 本研究は,基礎疾患保持者と基礎疾患がない者に分けて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する認識,そして基礎疾患保持者の療養生活への影響を明らかにすることを目的とした。方法 2020年8月~9月に実施された「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS研究)」のデータを用いた。調査項目のうちCOVID-19に対する認識,療養生活への影響について,基礎疾患・流行地域別に記述分析を行った。結果 不正回答を除く,25,482人の回答を用いた(がん455人,循環器疾患510人,呼吸器疾患883人,高血圧・糖尿病4,501人,精神疾患936人,基礎疾患無18,197人)。SARS-CoV-2に感染することが危険であると回答した者は,基礎疾患・流行地域に関わらず約70%であった。一方で,自身の感染リスクや重症化リスクがあると捉えていた者はいずれの疾患も20%未満であった。療養生活への影響をみると,影響があったと答えた者が最も多かったのは,呼吸器疾患保持者で,予定通りの通院ができなかった者が流行地域41.9%,非流行地域28.8%であった。また,精神疾患では,持病が悪化したと回答した割合が他疾患より多かった(流行地域27.2%,非流行地域22.9%)。結論 COVID-19流行が,基礎疾患保持者の受療状況に影響を及ぼしていることが示唆された。また,約70%がSARS-CoV-2に感染することが危険であると捉えていた一方で,自身が感染するかもしれないと捉えていた者はいずれの疾患保持者も20%未満であった。今後,詳細な要因分析を行い,受診への影響がどういった患者で多かったのか,経済状況によって差があるのか等を分析する必要がある。