著者
奥村 キャサリン
出版者
神戸女学院大学
雑誌
神戸女学院大学論集 (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.93-102, 2014-06

会議通訳やコミュニティ通訳など他の通訳のカテゴリーと違い、ビジネス通訳に関する研究は多くない。これまでの通訳研究は、会議通訳に携わる通訳者の認知プロセスやスキルを研究対象としているため、どの通訳カテゴリーにおいても同じような仕事になるという誤解を生む可能性がある。実際には、これらの通訳カテゴリーによって、業務の性質や求めれるスキルは大きく異なる。この事実は、通訳者の間ではよく理解されているものの、ビジネス通訳の性質や必要な能力を明確にする研究がほとんどないため、実務経験のない通訳学習者にとって、ビジネス通訳という職業は未だに謎である場合が多い。本研究では、言語学者のデル・ハイム氏による「SPEAKING モデル」というコミュニケーション能力に関するモデルを用いて、ビジネス通訳の分析を試みる。その上で、日本でのビジネス通訳に必要とされる通訳技術以外のスキルと、通訳者が直面する課題について述べる。本研究により、今後各種の通訳養成コースにビジネス通訳の社会的要素やコミュニケーション要素が取り入れられるようになることを期待したい。