著者
長澤 祐季 原 豪志 中川 量晴 豊島 瑞枝 奥村 拓真 戸原 玄
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.142-149, 2020-09-30 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

2020年3月以降,本邦において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は増加しており,歯科医療においても感染対策の指針が多方面から出されている。そのなかにオンライン診療の推進が含まれる。歯科医療において感染防止を目的としたオンライン診療の報告はまだない。今回われわれは,感染症拡大期に直接対面での診療の代替手段としてオンライン診療を実施し,高齢口腔癌術後患者の食事支援を行ったので報告する。 患者は86歳女性,左上下顎歯肉癌術後,右頸部リンパ節転移のため当院に入院していた。退院後も嚥下障害が遷延し,嚥下障害に対する外来での指導を継続していたところ,COVID-19感染拡大が深刻化し通院が困難になったことから,オンライン診療による代替を行った。歯科医師側に管理栄養士が同席し,患者側にオンライン支援者として義娘が同席した。オンライン診療では,支援者に実際の昼食をリアルタイムで撮影してもらい,それに基づいて,食事量,形態,摂取方法などを助言した。また,歯科医師側の管理栄養士が患者からの栄養摂取に関する相談に対応した。 オンライン診療は,患者の感染リスクや通院時間などの身体的負担を軽減することが利点であった一方,情報通信機器の導入などの課題が挙げられた。 感染症流行期の特措的手段として情報通信機器を用いた代替法が実施可能であり,摂食嚥下リハビリテーションを含む食事支援においてオンライン診療は実用可能であることが示唆された。