著者
奥田 敏広
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

欧米近代は合理主義と科学技術の時代と考えられがちであるが、中世伝説が時代遅れな過去の遺物として打ち捨てられていたわけではない。多くの芸術家が中世の英雄伝説や聖人伝説を素材として活用している。しかもそれは、通説となっているような、後ろ向きの復古主義的な目的でもなければ、偏狭な国粋主義的目的のためばかりではない。そこには、宗教や共同体からエロス的な「近代の愛」へという、換骨奪胎ともいうべき、変質には違いないがまた継続性も見られる関係が存在することを、中世に成立したタンホイザー伝説をめぐって具体的に明かにした。