著者
奥田 敏統 中根 周歩
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.117-127, 1986-07-31

シバ(Zoysia japonica)の摘葉(defoliation)による植物体の損傷後の再生長が,他種との競合関係や土壌条件の変化に伴ってどのように変るか,という点を明かにする目的で,広島県の北東部に位置する吾妻山(1260m)の短草本群落内で調査実験を行った。すなわち,1983年の6月22日に測定する分げつ枝(target tiller)の葉身の摘葉と,まわりの植物の刈り取りを組み合せた4処理を行い,5日おきに7月12日までtarget tillerの生長(葉身の長さ)の測定を続けた。またこれらの野外観察は斜面の上部,中部,下部において行い,同時に調査区の土壌条件や植生などの測定及び分析も行った。結果1).シバの再生長は競合関係を緩めた(回りの植生を刈りとった)処理では,そうでない処理よりも遥かに速く,また競合関係が緩められた状態では,target tillerに摘葉処理をした方が処理をしなかったtillerより再生長は良かった。2).この傾向は斜面上部では統計的に有意な結果が得られたが,斜面下部では4処理間での差は殆どなかった。3).実験開始後の新しい葉の出現率は競合関係を緩めた方が高くなり,加えてtarget tillerに摘葉処理をしたものでは古い葉の枯死率が低くなった。4).これらの結果は,植物体の生理的補償作用のレベルが,他種との競合関係や土壌条件の変化によって変りうる,ということを示している。5).シバはC_4植物であるたあ,滞水期間が長く有機物の腐植化が進んでいる斜面下部の土壌条件では,このような補償作用は有効に働かないのではないかということが推測される。
著者
新山 馨 米田 健 奥田 敏統 山下 多聞
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

東南アジアの熱帯多雨林で、地下部の相対成長式を実測により作成し、正確な地下部現存量をはじめて明らかした。半島マレーシア、パソ森林保護区の熱帯多雨林で、最大幹直径、116cmの個体を含む121個体(78種類)の地下部を掘り取り調査した。細根と調査中に失われた根の量も補正し、精度の高い地下部現存量推定式を作成した。地下部、地上部のバイオマスは95.9 Mg ha-1と536 Mg ha-1、地下部・地上部の比は0.18と推定された。