著者
奥田 眞夫 桑原 俊也 丸山 剛郎
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

平成3年度、4年度に正常者と顎口腔機能異常者を対象として収集した咬合、咀嚼筋活動および咀嚼時下顎運動のそれぞれのデータを分析し、咬合異常による異常な歯牙接触と咀嚼運動の関連性を検討することにより、顎口腔機能異常の発症のメカニズムを考察した。咬合については、臼歯部におけるクロスバイトおよび平衡側干渉、前歯部のクロスバイトあるいあインターロッキングにより下顎が偏位し、顎関節内部障害や咀嚼筋における筋膜疼痛機能障害症侯群に至ったものと考えられる結果が明らかとなった。すなわち、ナソマット咬合器におけるファンクショングラフの分析結果に基づき、歯列模型で下顎運動をシュミレートすることにより、各種咬合異常に起因する機能時の歯牙接触の異常が、顎関節や咀嚼筋に与える影響が3次元的に考察できた。咀嚼筋活動については、顎口腔機能異常者では、正常者にみられるような左右側のバランスあるいは各咀嚼筋における協調性が認められず、異常な歯牙接触による下顎の偏位をコントロールしようとする補正がなされており、これは咀嚼時下顎運動経路上に筋活動量を色表示として同時描記する方法で診断可能であることを、平成5年度日本補綴歯科学会関西支部学術大会で発表した。下顎運動については、約10年間に大阪大学歯学部附属病院第一補綴科に来院した顎口腔機能異常者の咀嚼時下顎、運動の分析により、発症原因となる咬合異常の診断が可能となっているが、3次元的な下顎のトランスレーションのみならず、軸回りのロ-テーションも考慮に入れる必要性があることを、第89回および第90回日本補綴歯科学会学術大会において発表した。今後さらにこれらを統合し、より詳細な顎口腔機能異常診断システムの開発を目指すものである。