著者
奥田 誠一
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

キュウリモザイクウイルス(CMV)感染タバコ葉から全RNAを抽出し,CMVのゲノムRNAあるいはサテライトRNAの配列を基にしてプライマーを作製し,ヘテロな分子が互いに結合していると想定してRT-PCRで増幅してクローニングを行い,塩基配列を決定した。すると,CMVに存在するゲノムRNA1〜3どうしがランダムに直鎖状になったと考えられるRNA分子が容易に検出された。しかし検出されたRNAは(+)鎖どうし,あるいは(-)鎖どうしの結合のみで,(+)(-)という結合は認められなかった。このような結合部分の塩基配列は3'末端側が欠損している場合が多く,一部に挿入も認められた。しかし純化試料からは結合したRNA分子は検出されなかった。さらにサテライトRNAを持つCMVの感染葉からは,ゲノムRNAどうしだけでなく,サテライトRNAとCMVゲノムRNAが結合した分子も検出された。同様な実験をキュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)の感染葉についても行ったところ,やはり(+)鎖どうしや(-)鎖どうしが直鎖状に結合したRNA分子が検出され,RNAウイルスが持つRNA依存RNAポリメラーゼによるテンプレートスイッチングの結果と考えられた。とくにサテライトRNAとCMVゲノムRNAの結合は,ゲノムRNAの増殖阻害を引き起こしていると考えられた。また研究の途中で,容易にウイルスRNAをPCRで検出できる簡易直接チューブRT-PCR法の開発にも成功した。さらに,結合を確認するために,感染性全長cDNAクローンも完成させた。
著者
奥田 誠一 前田 忠信 松澤 康男 稲泉 三丸 福井 糧 菅原 邦生
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.環境保全型農業に関する研究:病害虫防除のための新技術開発のため,有用土壌微生物を利用した土壌病害の防除法を検討するとともに,害虫の生息種及び生態について比較研究した.在来家畜の飼養管理技術に関して,卵用の在来種である紹興鴨種畜場を調査した.飼料は専用の配合飼料と川に生えているホテイアオイなどを用い,排泄物は川に流すという粗放的であるが,立地条件を生かした飼養管理を行い,3人で8000羽を管理していた.現状では環境保全型農業に近い方式であるが,多数羽飼育が求められたときの対応は今後の課題である.2.遺伝資源の開発と利用に関する研究:イネの多収技術,高品質化に関わるハイブリツドライスについて,中国では既に作付の約50%がハイブリッド品種で占められており,籾収量で1t/10a以上のかなりの多収が予想される.採種のために,細胞質雄性不稔維持系統を4列,回復系統を1列の5列-1m幅で繰返し栽植され,種子収量は150〜300kg/10a程度であるので1/100〜1/200の採種圃場が必要と推定される.浙江省から安徽省にかけての河川沿いの中山間地〜山間地では,河川敷から緩やかな斜面における水田と山の裾野部の畑にトウモロコシ,大豆,サツマイモが栽培され,トウモロコシの後に麦を入れ3年4作の輸作体系が取られ,農家の自給食糧を持続的に確保し得る生産方式が認められた.その他,ゴマ,ヘチマ,小菊(薬用茶)などの作付もあり,茶は近年の輸出用茶の需要拡大に伴い新植園が多く,きつい斜面でも開墾されていた.