著者
奥西 有理 田中 共子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-16, 2008

在日外国人留学生の受け入れに関わるホストとして、日本人学生による留学生へのソーシャルサポートの提供について、特に文化的側面に焦点を当て、実証的な解明を試みた。従来、ソーシャルサポートが異文化滞在者の適応促進に有効とする証左は多いが、ホストの視点は希薄であり、今回は留学生と親しい日本人ホスト学生をペアで質問紙調査の対象者として、50組の回答を得た。ソーシャルサポートのニーズと実際の授受の量的把握のため、留学生にはサポートして欲しいと思う心理的なニーズ、日本人学生にはその予測、及び実際のサポートが授受されたと思う個人の認識を両者に、評定してもらった。次いで提供した文化的サポートの具体的な内容をホストに自由記述してもらい、内容分析をするという質的手法で整理した。文化的サポートは、各種のサポートの中で比較的上位に位置した。ニーズと実際の提供の間や、ホストとゲストの認識の間のずれは、わりと小さかった。外国文化を理解する、日本文化の理解を導く、の2方向の文化的サポートを想定したが、前者では、日本人学生によるニーズ認識やサポート提供意識は、留学生より高めであった。後者に関しては、留学生のニーズ認識やサポート受領意識では前者より高く、ホストのサポート提供意識では前者より低い傾向があった。ホストには、ゲストと受け入れ社会を結ぶ、文化的な説明、調整、仲介の能力の涵養が課題と考えられた。