著者
菊池 清 妹尾 千賀子 中村 嗣 大日 康史 菅原 民枝 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.351-356, 2010 (Released:2011-02-05)
参考文献数
4

新型インフルエンザ(Flu)流行時の施設内感染防止と労働安全衛生上の必要性から,2009年9月1日から職員対象症候群サーベイランスを始めた.Webブラウザ上で稼動する職員健康管理ツールを開発し,病院内で働く全職員1350名の症状(症状なし,咳/鼻水/咽頭痛,発熱,嘔吐/下痢,その他)などを各部署責任者が毎朝9時までに登録することにした.参照権限はインフェクションコントロールチーム(ICT)主要メンバーと病院管理部門の10名に限定した.登録情報をもとにICTが介入し,出勤停止命令や該当部署の接触者の管理などを行った.9月1日から12月31日までの全部署登録率(情報入力された職員の総数/1350名)の中央値(範囲)は,78日間の平日が85.0%(74.4%~98.5%),44日間の休日が43.2%(34.2%~53.0%)であった.症状別では,「咳/鼻水/咽頭痛」が最も多く,次に「発熱」,「嘔吐/下痢」の順であった.発熱した全ての職員(114名)をICTが指導した.Fluの診断を受けた39名の職員は1週間の出勤停止とした.職員から患者への感染は起こらなかった.IT化された職員対象症候群サーベイランスの運用は,職員の健康状況が容易に把握でき,ICTの早期介入を可能にした.