著者
新小田 春美 姜 旻廷 松本 一弥 野口 ゆかり
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.97-108, 2002-03
被引用文献数
2

本研究は, 産前7週から産後15週間にわたって連続した26名の母親と出生から14週齢の乳児12名および年齢・産歴をマッチングした12名の非妊産婦(対照群)の睡眠日誌の解析から, 産後の母親の睡眠・覚醒行動の変化や夜間における母親と乳児の覚醒行動の同期性および母親の夜間覚醒と疲労感との関連性などについて検討した。母親の夜間中途覚醒は, 乳児の授乳・排泄などの世話に殆どが費やされていた。出産後の早い週ほど夜間睡眠の乱れが大きく, 乳児の睡眠・覚醒リズムの発達に伴って母親の中途覚醒時間も暫時減少した。母親の頻回の中途覚醒は, 産後9週ないし10週頃まで持続するが, 産後14週に至っても対照群に比し有意に増大していた。入眠状態, 熟眠感, および起床気分の不調の訴え率は, 妊娠末期から産後7週ないし8週頃まで有意に高かった。疲労感の訴え率は, 産後10週頃まで高いレベルを維持しその後やや減少したが, 産後15週にいたっても対照群に比して有意に高かった。「頭が重い」, 「眠い」, 「目が疲れる」, 「肩がこる」の訴えスコアーは, 産後どの週にあっても有意に高かった。以上の結果から, 母親の夜間陸眠の乱れは, 産後の早い週ほど大きく, 乳児の睡眠・覚醒リズムの発達にともなって, 暫時改善されていくとは言え, 疲労は産後15週に至っても残存するものと推測された。