著者
孔 祥吉 馮 青訳
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.12-25, 2007-06-25

本稿は,宇都宮太郎の明治33年(1900年)の日記を中心とした日・中の資料に基づき,義和団時期の政治的激動の中での張之洞の動向を分析し,彼に独立,帝王志向と解釈できる動きがあることを論じるものである。八ヶ国連合軍の進攻,西太后,光緒帝の首都脱出という清朝統治の危機的状況の下,短期間ながら張之洞は清朝からの独立,帝王化を志向したようで,そのことは張の腹心の日本側への談話,軍事視察団の対日派遣,軍事力拡充,自立軍の利用などの動きから読みとることができる。だが,八ヶ国連合軍の北京占領後,講和が成立し清朝の存続が明白になると,張之洞はそのような考えを直ちに断念したのであった。