著者
宇佐川 智也 赤池 泰子
出版者
日本緬羊研究会
雑誌
日本緬羊研究会誌 (ISSN:03891305)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.39, pp.9-16, 2002-12-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
11

雑草の防除草にめん羊を利用する可能性を探るために, めん羊を繋牧した時の行動および食草量について調べ, めん羊の繋牧という方法の有用性について検討した。繋牧には, 比較的従順なタイプと幾分神経質なタイプの2頭の成雌めん羊 (平均体重 : 65.4kg) を供試し, ロープが絡まない程度の近い位置に繋いだ。繋牧時間は10 : 00から15 : 00までの日中5時間とし, 計6回繰り返して行った。供試しためん羊は繋牧試験の前日の夕方から畜舎に入れ, 畜舎内では水だけを給与した。繋牧は供試めん羊に犬用の首輪を装着し, 2mのロープで繋いで行った。供試めん羊の繋牧中の行動はビデオ録画し, その連続映像を用いて食草行動, 飲水行動, 休息行動, 探査行動について検討した。繋牧に先立って, 繋牧時と同じ時間帯に成雌めん羊3頭を用い, 紙オムツを装着しての放牧を2回繰り返して糞尿排泄量を予め測定しておいた。繋牧中の食草量は繋牧後のめん羊の体重増加量を求め, これと糞尿排泄量から算出した。食草行動に費やした総時間数では, 1号羊で3.35-4.57時間, 2号羊で3.03-4.55時間であった。2号羊では0.6-2.1分の範囲で1号羊より短い食草行動を頻繁に繰り返していた。休息行動は, 比較的従順なタイプの1号羊では4回目の観察日を除いて1-3回観察されたが, 幾分神経質なタイプの2号羊では2回目の観察日に2回観察されただけで, 探査行動についても1-5回目の観察日において1号羊では1時間あたり0.4-6.6回であったが, 2号羊では6.6-27.8回となり緊張して警戒している様子を示した。5時間の繋牧中の体重増加量は, 1号羊では3.0-4.8kgであったが, 2号羊では1.2-6.8kgと変動幅が大きく特に前半の観察日においてわずかであった。4回目の観察日では1号羊, 2号羊いずれも十分に食草しており, 予め測定しておいた糞尿排泄量から算出した推定食草量はそれぞれ5.5kgと7.5kgであった。幾分神経質なタイプの2号羊においても4回目の観察日以降, 繋牧に慣れて十分食草できたようであり, 6回目の観察日では周囲が少し騒がしかったが推定食草量は3.7kgであった。以上のように, 2頭を近くに繋牧することによってめん羊は繋牧という状況に次第に慣れること, 繋牧への順応性には個体差が見られること, 日中5時間の繋牧において4kg前後とかなりの食草量があることが示され, めん羊を繋牧することの有用性が十分に示された。
著者
宇佐川 智也 中村 誠 津田 栄三 加藤 啓介
出版者
石川県農業短期大学
雑誌
石川県農業短期大学研究報告 (ISSN:03899977)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.75-78, 1988

近年の豊かな食生活は「飽食の時代」と言われるまでになって,食肉に対しても高級化・多様化が求められている。ラム肉(子羊肉)は欧米では高級肉と位置づけられているが,わが国では新鮮でおいしいラム肉を食べる機会が少ないため,くさい肉,ジンギスカン用,というマトンのイメージがまだ強いようである。ラム肉のおいしさが知られるようになると,高級品としての新鮮なラム肉が今以上に求められる事は十分に予想される。めん羊は体躯の大きさが手ごろで性質が温順であるので飼いやすく,一村一品運動の好適な対象になり得る。わが国のめん羊飼養頭数は,昭和32年の約100万頭をピークに,昭和51年には約1万頭と激減した。その後,昭和61年の26,200頭とわずかに回復したにすぎない。国民一人あたりの飼養頭数でみると,イギリスの0.6頭,オーストラリアの9.0頭,ニュージーランドの21.8頭に比べて,わが国ではわずかに0.0002頭である。したがって,北海道や長野県などのめん羊飼育の盛んな地域を除けば,冷凍の輸入品が市販されてはいるものの,ラム肉を食べる機会は非常に少ないのが現状である。本研究では,本県でのめん羊飼育の可能性を探る手初めとして,サフォーク種めん羊を用いて,生後約6ヵ月間飼育したときの増体成績および産肉成績について,わが国内外の資料と比較検討した。