著者
安田 良子 宇佐美 彩
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.387, 2021 (Released:2021-12-28)

フィギュアスケート競技における傷害調査は、小学生や中学生から競技を開始した選手を対象とした報告が多く、大学生から競技を開始した選手を対象とした研究については調べた限り認められない。そこで、我々は大学入学以降にフィギュアスケート競技を開始した選手54名(男性9名、女性45名)を対象にアンケートを用いて傷害調査を行い、傷害の傾向を明らかにすることを目的とした。調査項目はIOC injury surveillance systemに示された項目に、学年、所持級、傷害発生時期、受傷時の氷上状態を追加し、傷害発生数および傷害発生率を検討した。部位別傷害発生数は足関節11例(総発生数の34.4%、傷害発生率1.8(0.7-2.9)/1000 AHs (カッコ内は95%信頼区間を示す)、4.6(1.9-7.4)/1000 AEs)が最も多く、種類別発生数は捻挫12 例(総発生数の37.5%、発生率2.0(0.9-3.1)/1000 AHs、5.1(2.2-7.9)/1000 AEs)が最も多い結果となった。最も多い傷害は足関節捻挫8例(総発生数の25.0%、発生率1.3(0.4-2.2)/1000 AHs、3.4(1.0-5.7)/1000 AEs)であり、ジャンプ着地側を受傷している選手が多く、競技特性が反映された結果となった。原因別発生数は転倒時に受傷16例(総発生数の45.7%、発生率2.6(1.3-3.9)/1000 AHs、6.7(3.7-10.1)/1000 AEs)が最も多く、安全な転倒方法を指導する必要性が示された。学年別発生数は2年生12例が最も多く、各学年で目標とする等級に影響を受けると推察された。傷害発生時期は試合期直前の9月8例が最も多く、綿密なコンディショニング計画立案の必要性が考えられた。受傷時の氷上状態は製氷前7例が最も多く、製氷直後に練習を行うことが傷害予防に繋がると考えられた。