著者
楊 紅梅 齋藤 健司
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第72回(2022) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.399, 2022 (Released:2022-12-22)

日本における相撲の歴史は長く、奈良時代の相撲節会、鎌倉時代の武家相撲、江戸時代の勧進相撲など、多様な形式で行われて。特に、江戸時代になると全国で勧進相撲が興行として行われ、1781年に相撲会所が結成され、庶民の娯楽文化として定着した。その後、江戸時代が終了し、西洋文化を取り入れて明治維新、日本社会の近代化がすすめられる過程で、このような社会の変革に相撲団体も対応し存続を図る必要性が生じた。そして、1889年に東京大角力協会が結成され、1925年に財団法人大日本相撲協会が設立されました。この財団法人大日本相撲協会の設立以後、日本においては、相撲協会が法人化に伴う組織改革を繰り返しながら団体組織として維持発展してきた。本研究は、日本の伝統的な文化である相撲が近代社会の変革に対応し、西洋の文化及び制度との衝突を克服することができたのは、この団体の法人化にあると考えた。そこで、まず、本研究では、相撲協会が初めて法人化された1925年の大日本相撲協会の設立までを研究の対象とし、相撲協会の法人化の過程を明らかにし、法人化の歴史的な意義を考察することを研究の目的とした。また、本研究では、相撲協会の財団法人化という制度の変化について、歴史的新制度論の分析の視角に基づいて、歴史的な制度の変化の過程を明らかにした。相撲協会の財団法人化という制度の変化がどのような歴史的過程で行われたのか、制度の変化に影響を与えた歴史的事実や関係するアクターの行動を明らかにした。また、1925年の大日本相撲協会の財団法人化の政策決定過程について考察した。具体的には、1909年に常設館が開館し国技として大相撲興行制度が整備されていく過程、1925年に摂政杯を契機に東、西相撲協会が合併し、大相撲が統一され、その後財団法人となる過程、そして財団法人設立後、組織·制度などの改革が行われる過程を明らかにした。
著者
安田 良子 宇佐美 彩
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.387, 2021 (Released:2021-12-28)

フィギュアスケート競技における傷害調査は、小学生や中学生から競技を開始した選手を対象とした報告が多く、大学生から競技を開始した選手を対象とした研究については調べた限り認められない。そこで、我々は大学入学以降にフィギュアスケート競技を開始した選手54名(男性9名、女性45名)を対象にアンケートを用いて傷害調査を行い、傷害の傾向を明らかにすることを目的とした。調査項目はIOC injury surveillance systemに示された項目に、学年、所持級、傷害発生時期、受傷時の氷上状態を追加し、傷害発生数および傷害発生率を検討した。部位別傷害発生数は足関節11例(総発生数の34.4%、傷害発生率1.8(0.7-2.9)/1000 AHs (カッコ内は95%信頼区間を示す)、4.6(1.9-7.4)/1000 AEs)が最も多く、種類別発生数は捻挫12 例(総発生数の37.5%、発生率2.0(0.9-3.1)/1000 AHs、5.1(2.2-7.9)/1000 AEs)が最も多い結果となった。最も多い傷害は足関節捻挫8例(総発生数の25.0%、発生率1.3(0.4-2.2)/1000 AHs、3.4(1.0-5.7)/1000 AEs)であり、ジャンプ着地側を受傷している選手が多く、競技特性が反映された結果となった。原因別発生数は転倒時に受傷16例(総発生数の45.7%、発生率2.6(1.3-3.9)/1000 AHs、6.7(3.7-10.1)/1000 AEs)が最も多く、安全な転倒方法を指導する必要性が示された。学年別発生数は2年生12例が最も多く、各学年で目標とする等級に影響を受けると推察された。傷害発生時期は試合期直前の9月8例が最も多く、綿密なコンディショニング計画立案の必要性が考えられた。受傷時の氷上状態は製氷前7例が最も多く、製氷直後に練習を行うことが傷害予防に繋がると考えられた。
著者
角田 憲治 永田 康喜 神藤 隆志 北濃 成樹 大藏 倫博
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第73回(2023) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.240, 2023 (Released:2023-12-01)

加齢に伴い、歩行や自転車による活動的移動が特異的に減少することが知られている。自転車は、歩行よりも広範囲の移動を可能とし、膝等の関節への負担も少ない。本邦は、高齢者であっても、そのほとんどが自転車の乗車技術を持っている希少な国であり、交通網が脆弱な中山間地域では、自転車は高齢者の生活を支える移動手段となっている。本研究では、中山間地域在住高齢者を対象に、二時点の郵送調査と、市データベースに基づく追跡調査により、自転車の継続的利用の重要性を要介護化および死亡リスクの低減という観点から検証する。茨城県笠間市における二時点の郵送調査(2013年と2017年)の両方で、自転車利用について回答が得られた3633名の高齢者を対象に、市データベースを用いて要介護1以上の認定と死亡の状況を2021年まで追跡した。Cox回帰分析を用い、年齢、性、学歴、経済状況、同居有無、BMI、各種既往、ストレス度、外出頻度、主移動手段としての車利用有無、中高強度活動量を調整した。欠損値は多重代入法により補完した。追跡の結果、二時点における継続的な自転車利用者は、一貫した未利用者に比べて、有意に低い要介護化リスク(HR=0.75, 95% CI=0.58―0.98)および死亡リスク(HR=0.57, 95% CI=0.40―0.81)を示した。一方、自転車利用の中止、開始については、リスク低減と有意な関連を認めなかった。また、補足として行った一時点(2013年)の自転車利用量(分/週)に基づく分析では、両アウトカムと有意な関連を認めなかった。高齢者における継続的な自転車利用は、要介護化および死亡のリスク低減と関連するが、利用中止や開始ではこのような関連は認められないことがわかった。また、一時的な利用状況の評価では、このような関連性は検出できないため、複数回にわたって行動を評価することの重要性が確認された。
著者
山際 大雅 村山 敏夫 栗原 裕佳 西田 唯人
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第73回(2023) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.473, 2023 (Released:2023-12-01)

近年、道路交通環境の整備や自動車安全装備の開発等により交通事故の発生件数は減少傾向にあるが交通事故全体に占める高齢ドライバーの割合は増加傾向にある。特に車両同士の交通事故は一時停止交差点における出会い頭事故が最も多く発生している。また、高齢ドライバーは加齢に伴う筋力の衰えや視力の低下、関節可動域が狭くなることで膝関節を大きく屈曲させた運転姿勢が散見される。以上より本研究は高齢ドライバーに散見される不適切な運転姿勢が一時停止後の発進局面における運転行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。被験者は運転に支障をきたす基礎疾患がない60代及び70代の高齢者を対象とした。実験は新潟県運転免許センター内の屋外試験場を使用し、実車両を用いて一時停止交差点の通過を含む指定のコースを走行させた。実験車両には被験者となるドライバーのみが乗車し、実験者は無線で車外から指示を行った。走行は自動車メーカー等で推奨されている姿勢に近い標準姿勢と高齢者に散見される膝関節を屈曲させた前傾姿勢で行い、姿勢間で下肢の筋活動及び車両挙動を比較した。筋活動は表面筋電計を用いて内側広筋・外側広筋・大腿直筋・大腿二頭筋・前傾姿勢・腓腹筋・ヒラメ筋の7箇所の測定を行い、各被験筋の筋活動量を指標とした。車両挙動は実験車両に搭載されているセンサによりCANデータを取得し、発進時の加速度及び車両速度を指標とした。本研究により交通安全教育の推進や高齢ドライバーの運転行動を補う自動車の開発に寄与することが期待される。
著者
井上 裕美子 平 勝斗
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.269, 2021 (Released:2021-12-28)

継続的にトレーニングを行うためには、仲間と行ったり、応援があったりした方が続きやすいと考えられる。しかし、昨今のコロナ禍の影響で、なかなかジム等で仲間とトレーニングする機会が少なくなっている。この状況下では、1人でも手軽に家庭内でできるトレーニング環境が必要と考えられる。そこで、本研究では、家庭内で手軽にできるアバターの応援を付加したトレーニングシステムの開発を行った。また、アバターの応援効果を効率的に引き出すには、どのタイミングからアバターの応援が付加されると良いかについても検討した。 開発したシステムは、筋力トレーニングとして3分間のカーフレイズを行うシステムとした。アバターの応援効果を検討するため、アバターありとなしのコンテンツを作成し、アバターありでは、アバターの表示時間として3パターン(3分表示、1分経過後表示、2分経過後表示)を作成した。システム構成は、シングルボードコンピュータと制御用PC、ディスプレイとし、家庭内で簡単に利用できる構成とした。シングルボードコンピュータでは、ヒラメ筋から筋電図を測定し、その筋電図波形からカーフレイズの回数を算出した。トレーニング中の画面には、アバター、トレーニング回数、時間表示等を体験者に示した。 評価実験として、9人の大学生に開発したシステムを利用して貰った。その結果、アバター表示がある方が、継続できそうというアンケート回答が56%であった。また、表示時間としては、アバターを途中から表示させる1分経過後、2分経過後条件で9名中7名から良い変化があると回答を得ることができ、途中から、アバター表示をさせると応援効果が高くなる傾向が示された。今後の展望としては、さらに長期的な利用を考え、ゲーム性やアバターの応援のバリエーションを増す、トレーニングの種類を増やすなどの改良を行う必要があると考えられた。
著者
甲斐 裕子
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第72回(2022) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.51, 2022 (Released:2022-12-22)

コロナ禍に伴う、外出自粛・運動の場の閉鎖・テレワークの急拡大等により、人々の身体活動量が減少した。特に、高齢者では、社会的交流の低下とともに、フレイルや認知症のリスクが上がったと報告されている。一方で、2021年はスポーツ実施率が過去最高を記録するなど予想外の報告も出てきている。海外では、経済的に豊かな地域に住む住民は、日常生活で減少した身体活動を余暇の活動で補っているが、貧しい地域の住民はそうでないことなどが報告されている。我が国でも、緊急事態宣言後の高齢者の身体活動の回復度合いは、社会的つながりによって違いがあることが明らかになっている。すなわち、コロナ禍に関連した身体活動量の変化には、社会経済状況が関与している可能性があり、健康格差を拡大させてしまう懸念がある。このような状況を打破するために、各地でオンラインを活用した運動の機会の提供が試みられているが、その検証は緒に就いたばかりといえる。本シンポジウムでは、最初にコロナ禍に伴う身体活動・運動・スポーツの変化について整理し、その後、我々が行っているオンライン運動教室の実践研究について紹介する。
著者
稲葉 健太郎 水野 基樹
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.287, 2021 (Released:2021-12-28)

厚生労働省と経済産業省が推進する「健康経営」に取り組む企業が増えている。経済産業省は「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」といった顕彰制度を設けたり、健康保険組合及び地方自治体と連携して健康経営を推し進めており、メディアで健康経営が扱われる機会も多くなっている。 しかし、経済産業省が行った中小企業を対象とした健康経営の認知度の調査によると、健康経営について「全く知らなかった」が52%、「聞いたことがあるが、内容は知らない」が32%と、約8割の企業が健康経営の内容について知らないという実態も明らかとなっている。以上より、健康経営という概念は徐々に広がりを見せてはいるが、より多くの企業や従業員に浸透させるためには草の根的な啓蒙活動の必要があると考えられる。 そこで本研究では、企業に勤める従業員に対するインタビュー及びSNSに投稿されたテキストを分析することで、健康経営が一般的にどのような認知をされているのかを明らかにすることを目的に調査を行った。 インタビュー調査では都内のIT系企業に勤める4名を対象とした。調査の結果、健康経営の実践によって従業員の離職意識を間接的に低減させるとの意見を得られたが、健康経営による定量的・定性的なエビデンスを得る機会が無いため、費用対効果については疑問があるとの意見を得られた。また、SNSのテキスト分析の結果、頻出語では「企業」「健康」「従業員」「働く」といった単語が抽出された。また、共起ネットワーク分析では「健康」と「企業」「従業員」「投資」「向上」といった語のリンクが確認され、健康経営の効果についてSNSを通して発信されていることが明らかとなった。
著者
内田 英二 木本 理可 塚本 未来 神林 勲
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第72回(2022) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.255, 2022 (Released:2022-12-22)

就寝前にスマートフォンなどの電子機器使用を制限することにより睡眠関連物質であるメラトニン分泌量が増加して入眠に好ましい効果を示すことが知られている。本研究では就寝前の電子機器使用に関する介入を行い、使用制限が起床時主観的睡眠感と自律神経系活動に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。被験者は健康な大学生19名(男性9名、女性10名)として、連続した5日間における就寝前1時間の電子機器使用制限期間、対照とした連続5日間の非制限期間それぞれの条件下における測定に参加した。睡眠評価としてピッツバーグ睡眠調査票(PSQI-J)および起床時睡眠感調査(OSA-MA)の質問紙調査、自律神経系活動の評価として加速度脈波測定器(TAS9VIEW)を用い自律神経バランス測定を実施した。PSQI-Jは初回測定開始時、OSA-MAは各測定期間中の起床時に記入させ、自律神経系活動はHFを副交感神経、LF/HFを交感神経の指標として各測定期間の前後に測定した。また測定期間中のスマートフォン、パソコンなどの電子機器使用時間についても併せて確認した。電子機器の使用時間は制限条件下で約50分程度短くなったが有意差は認められなかった。睡眠の時間的変数では、睡眠時間はいずれの条件も平均で約6.8時間であり条件間の差はみられなかったが、就床および起床時刻の中間点を示すmidpointが制限条件下で約30分有意に早まっており(p<0.05)、睡眠相が前進している状況が確認された。起床時睡眠感調査では制限条件下における起床時眠気因子(p<0.01)、疲労回復因子(p<0.05)が有意な高値を示した。自律神経系活動に関しては非制限条件下でHFの低下傾向とLF/HF の増加傾向が観察された。これらの結果から就寝前1時間の電子機器使用制限は睡眠感および自律神経系活動に好ましい影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
笠原 春香 松尾 博一
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第72回(2022) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.277, 2022 (Released:2022-12-22)

日本の大学スポーツ振興における関心は、スポーツ基本計画の一部に大学スポーツの振興が位置付けられたことをきっかけに高まりをみせてきた。その後、大学スポーツの振興に関する検討会議を経て具体的な議論が進められ、第二期スポーツ基本計画では、2022年3月までの具体的な計画目標として大学内におけるスポーツ分野を統括する部局の設置と100大学へのアドミニストレーター配置の促進が掲げられた。しかし、それらの設置や配置は一定進んだものの、目標の達成には至っていないのが現状である。さらに、大学スポーツ統括部局の実態は大学によって千差万別で、それらを一律に評価する評価項目がないために、実態を客観的に把握することは難しい。従って、まずは客観的な評価指標を用いて組織の状態を適切に評価し、その改善に向けた施策を検討することができる体制を整える必要がある。そこで本研究では、組織構造の3次元の観点(専門化・公式化・集権化)から、大学スポーツ統括部局の評価項目を策定し、日本の大学スポーツ統括部局の組織構造を客観的に評価すると共に、その望ましいあり方を提案することを試みた。大学スポーツ統括部局を有する12大学を調査対象として属性アンケートと半構造化インタビューを行い、定性比較法を用いてデータ分析を実施した。その結果、専門化では6つ、公式化では4つ、集権化では6段階の評価項目が抽出された。先行研究においては、組織は高度な専門化と公式化を有することが推奨されているが、調査対象の大学スポーツ統括部局の組織構造を評価したところ、すべての部局で低い専門化と公式化の組織構造であることが示された。集権化については、大学の方針によって適切なあり方(分散型・集権型)は異なるが、いずれの場合でも、上位の意思決定者と下位の意思決定者が少ないレポートラインで結ばれていることで、適切な集権化を実現しやすいことが明らかとなった。
著者
近藤 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第72回(2022) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.339, 2022 (Released:2022-12-22)

本研究は女子選手を対象としてアルペンスキー競技回転種目における競技成績に応じた急斜面区間における滑走の特徴を明らかにすることを目的とした。分析対象レースは第92回宮様スキー大会国際競技会女子回転競技1本目であった。分析対象者は、1本目競技を完走し、大きな減速を伴う失敗のなかった20名であり、1-7位の者を上位群、8-15位の者を中位群、16位以下の者を下位群とした。分析対象区間は、全53旗門のうち12-29旗門目までの急斜面区間(12-20旗門目を急斜面上部、20-29旗門目を急斜面下部)とした。分析項目は、タイム分析、滑走ライン分析、スキー操作分析であった。タイム分析の結果、各分析対象区間で上位群と下位群、中位群と下位群に有意な差が認められた。また、ターン後半に該当する旗門通過後にストックを突くまでの平均所要タイム及び雪煙の上がっている平均タイムで上位群と下位群の間に有意な差が認められた。滑走ライン分析の結果、上位群と比較すると中位群は旗門上部の滑走ラインが旗門に近く旗門下部でターン弧が膨らむ滑走ラインとなる傾向があり、下位群は旗門通過後の山回りが深く旗門から離れた滑走ラインとなる傾向が明らかとなった。スキー操作分析の結果、特に急斜面下部において、上位群はゲートセッティングに応じてスキー先端の方向付けをコントロールしているのに対し、中位群は多くのターンで旗門通過時にスキーの先端は斜面下方向を向いており、下位群は多くのターンで旗門通過時にスキー先端は次の旗門方向を向いていた。以上のことから、急斜面区間をより速いタイムで滑走するためには、エッジング時間を短くすることで除雪抵抗による減速を最小限に留め、ゲートセッティングに応じたスキーの方向付け及び旗門通過後の素早いストックワークによる切り換え操作によってタイムロスの少ない滑走ラインを維持して滑走することが求められる。
著者
劉 暢
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.91, 2021 (Released:2021-12-28)

日本武道の国際化については、これまで主に西洋諸国を対象とした柔道、剣道、空手などの伝播状況に関する研究が多く見られる。これに対して、地理的、そして文化的に近縁性のある中国において日本武道はどのように認識され、普及してきたのか。またその過程で中国武術などを含む中国の身体文化にどのような影響をあたえたのか。これらの問題を解明することは、日本武道の国際化をより相対的に捉えることができるだけではなく、グローバル化する今日の社会において、多様な身体文化の流通・融合を理解することにもつながると考える。海外における日本武道の伝播について協会の設立、人員の交流、活動の実態などの内容があげられ、それらに関する史・資料も多岐にわたる。そこで、本研究が体育雑誌に着目した理由は、雑誌には編集者ないし出版社の認識や主張が強く表れる傾向があるからである。そうしたメッセージがコミットメント度の高い読者に受信されやすく、ときには読者のフィードバックもみられる。このような考えから、本研究では初歩的な作業として(1)日本武道はどのように中国の体育雑誌で表象されてきたのか、また(2)それは中国武術の発展にどのような影響を与えたのか、という二つの問いの解明を試みた。なお、研究機関は中華人民共和国が成立した1949年から2019年までとした。また、具体的に用いる体育雑誌は以下の通りである。『新体育』(総合誌、国家体育総局中国体育報業総社、1950年創刊、現在月刊として発行)、武術雑誌『中華武術』(中国武術協会、人民体育出版社、1982年創刊、現在月刊として発行)、『武林』(広東武術協会、1981年創刊、2006年廃刊)、『武魂』(北京武術院、北京体育局、1983年創刊、2013年廃刊)、『柔道与摔跤』(山西省体育運動委員会、1983年創刊、1992年廃刊)。
著者
堀田 文郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.246, 2021 (Released:2021-12-28)

彫刻のような肉体を作り上げ、ポーズを取って競い合う「ボディビル競技」、この競技は以前より、薬物問題等の問題を抱えてきた。例えばWADA(2020)によると、2019年のボディビル競技における陽性サンプルの割合は20%と非常に高かった。また、プロボディビルダーの間では薬物が公然の秘密とされているとの指摘もある(増田 2000)。以上を踏まえると、ボディビル競技には薬物使用までは至らずとも、競技に強くのめり込む競技者が数多く存在すると考えられる。ボディビル競技者はなぜ、多大な犠牲や健康的なリスクを負ってまで競技にのめり込むのだろうか。 国内のボディビル競技に関する先行研究は、競技方法に関する研究や生理学的な研究が主であり、社会学的な研究は竹崎(2015, 2019)の一連の研究、すなわち、男性高齢者ボディビルダーがいかにしてボディビルの価値を構築しているのかについて分析した研究と日本のボディビル文化を対象とした歴史研究に限定されている。 そこで本研究は、ボディビル競技者が競技へとのめり込む要因とその過程を明らかにすることを目的とした。また、本研究では、コンテストへの出場経験・予定のある競技者7名を対象とし、調査時期は4月~6月、調査方法は半構造化面接、主な調査項目は「競技に関する個人史」、「肉体の捉え方」、「競技実践の内容」とした。 その結果、競技者は、鍛えればその効果が必ず現れるという特性を持つ肉体に極めて高い予見可能性と成長可能性を感じ取り、その感覚を基に競技実践を漸次的に拡大させつつ徹底的なルーティン化を行っていること、また、競技者の行った競技実践は常にその意味が未来の競技実践へと外化される、いわば「意味の事後決定性」という特性を持っているために、競技者は過去の実践の意味証明と未来における成果を獲得すべく、現在の競技実践に没入せざるを得ない状況に置かれていることが明らかになった。
著者
山口 裕士 笠次 良爾 仲井 志文 立 正伸
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.321, 2021 (Released:2021-12-28)

【目的】投球動作の反復による、後期コッキング期から加速期における骨盤回旋運動の変化を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】大学生野球投手6名(右投手3名、左投手3名)を対象とした。対象の年齢は 21.2±1.6 歳、身長は171.3±6.3cm、体重は 67.2±5.1kgである。10球10セット(計100 球)の投球を投球間隔15秒、セット間に3分間の休憩を取り行わせた。光学式三次元動作解析システム(Mac3D、Motion Analysis 社製)を用いて、1セット目(1~10球目の平均値)と10セット目(91~100球目の平均値)の投球動作の変化を検討した。【結果】後期コッキング期から加速期においての骨盤の回旋角度は、1セット目79.7±8.4(°)、10セット目72.9±11.6(°)であり、有意に低下した(p< 0.05)。また、骨盤の回旋角速度は、1セット目585.4±52.4(°/s)、10セット目530.1±60.1(°/s)であり、有意に低下した(p< 0.01)。球速と上胴の回旋運動に有意な変化は無かった。【考察】1 セット目と 10 セット目で骨盤の回旋運動が有意に低下したことから、投球動作の反復によって、安定した骨盤の回旋運動を行うために必要な筋力や可動域が低下した可能性が考えられる。また、骨盤の回旋運動の低下は、運動連鎖の破綻に繋がり、代償的に体幹回旋運動や肩関節水平屈曲運動を強めて、肩関節外旋運動を誘発することが報告されている(宮下.2012)。本研究では、骨盤の回旋運動が低下したにも関わらず、上胴の回旋運動と球速に有意な変化が認められなかったことから、骨盤の回旋運動低下を胸椎の回旋で代償したと考えられる。【結論】投球動作の反復により、後期コッキング期から加速期においての骨盤の回旋角度と回旋角速度が有意に低下した。