著者
曽根 涼子 安永 奈央
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.71, 2021

<p>一般的な縄跳び運動の筋の収縮動態は典型的な伸張-短縮サイクル(SSC)運動であり、縄跳び運動でSSC運動の遂行能力が強化される可能性が示唆されている。本研究では、大学陸上短距離選手において、多回旋跳びを取り入れた縄跳びレーニングがSSC運動の遂行能力(RJ-indexを指標とした)、およびその能力と密接な関係が認められている走跳能力に及ぼす影響について検討した。被験者は、短距離種目を専門とする学生であり、非トレーニング群(7名)には通常のトレーニングのみ行わせ、トレーニング群(6名)にはそれに加えて段階的に多回旋跳びに挑戦するように計画された4週間の縄跳びトレーニングを行わせた。跳び方は、接地時・跳躍時に膝を曲げず、接地時間を短くするようにさせた。トレーニング期間の前後とトレーニングの有無を要因とした分散分析を行った結果、1・2回旋跳び時の跳躍高/接地時間の値、および最大連続跳躍(RJ)での跳躍高/接地時間の値(RJ-index値)、および60 m走、垂直跳び、立ち幅跳びと立ち五段跳びの記録について、いずれにも有意な交互作用は認められなかった。ただし、上記検討とは別に運動習慣のない学生(4名)にも同じ縄跳びトレーニングを行わせたところ、RJ-index値および立ち幅跳びの記録が全員で向上した。縄跳び運動時の%RJ-index値は、110 bpmでの1回旋跳びが約50%、90 bpmでの1回旋跳びと2回旋跳びが約75%、3回旋跳びが約95%であった。以上のことから、日々鍛錬している大学陸上短距離選手では、多回旋跳びを取り入れた4週間の縄跳びトレーニングによってSSC運動の遂行能力に対する向上効果は認められないことが示された。また、よりゆっくりとした速さで短い接地時間で縄跳びを行うことは、より高いSSC運動の遂行能力を発揮できることが確認された。</p>
著者
安田 良子 宇佐美 彩
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.387, 2021 (Released:2021-12-28)

フィギュアスケート競技における傷害調査は、小学生や中学生から競技を開始した選手を対象とした報告が多く、大学生から競技を開始した選手を対象とした研究については調べた限り認められない。そこで、我々は大学入学以降にフィギュアスケート競技を開始した選手54名(男性9名、女性45名)を対象にアンケートを用いて傷害調査を行い、傷害の傾向を明らかにすることを目的とした。調査項目はIOC injury surveillance systemに示された項目に、学年、所持級、傷害発生時期、受傷時の氷上状態を追加し、傷害発生数および傷害発生率を検討した。部位別傷害発生数は足関節11例(総発生数の34.4%、傷害発生率1.8(0.7-2.9)/1000 AHs (カッコ内は95%信頼区間を示す)、4.6(1.9-7.4)/1000 AEs)が最も多く、種類別発生数は捻挫12 例(総発生数の37.5%、発生率2.0(0.9-3.1)/1000 AHs、5.1(2.2-7.9)/1000 AEs)が最も多い結果となった。最も多い傷害は足関節捻挫8例(総発生数の25.0%、発生率1.3(0.4-2.2)/1000 AHs、3.4(1.0-5.7)/1000 AEs)であり、ジャンプ着地側を受傷している選手が多く、競技特性が反映された結果となった。原因別発生数は転倒時に受傷16例(総発生数の45.7%、発生率2.6(1.3-3.9)/1000 AHs、6.7(3.7-10.1)/1000 AEs)が最も多く、安全な転倒方法を指導する必要性が示された。学年別発生数は2年生12例が最も多く、各学年で目標とする等級に影響を受けると推察された。傷害発生時期は試合期直前の9月8例が最も多く、綿密なコンディショニング計画立案の必要性が考えられた。受傷時の氷上状態は製氷前7例が最も多く、製氷直後に練習を行うことが傷害予防に繋がると考えられた。
著者
木俣 健 窪田 辰政 神藤 隆志 三橋 大輔
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.71, 2021

<p>本研究の目的はテニスにおける世界の男子トッププロ選手(以下:上位群)と学生選手(以下:下位群)を対象に、サービスゲーム中のブレイクポイントをセーブした時の1stサーブの確率、ポイントの終わり方、ラリー数を比較しトッププロ選手の戦術選択を明らかにすることで、サービスゲームのキープ率向上に関する戦術指導の有益な情報を得ることであった。</p><p> 対象として、上位群をATPランキングが15位以内の選手20名が出場した男子プロテニス協会主催の大会14試合(2018年~2020年)の中から100ポイント、下位群を関東学生テニス連盟が主催する3つの主要な個人戦において本戦出場経験のない選手21名が行った学生の公式戦、対外試合や部内戦(2019年~2020年)の中から127ポイントを抽出した。さらにサーブの確率、ポイントの終わり方(Unforced Error、以下UE:自らに原因のあるエラー、Forced Error、以下FE:相手の良いショットに原因のあるエラー、Winner、以下W:ノータッチエース)、ラリー数の3項目に関して分析を行った。統計処理として、それぞれの結果についてχ<sup>2</sup>検定を行い、有意差の見られたデータは残差分析を行った。有意水準は5%未満とした。</p><p> 結果として、1stサーブの確率は上位群が有意に低かった(p<0.05)ことに加え、1stサーブが入った場合のポイントの終わり方については、上位群のFEの割合が有意に高かった(p<0.05)。これらより上位群は1stサービスにおいて、多少確率を下げてでも主導権を握り、相手からFEを引き出していることが考えられる。さらに上位群は、ポイントが終了するまでのラリー数が短い場合(5球以下)においてもFEの割合が高いことから(p<0.05)、上位群は1stサービスの確率が下がるリスクを冒してでもサーブを始めとする攻撃的な戦術選択を行っていると推察される。</p>
著者
成瀬 九美 上田 遥菜
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.71, 2021

<p>身体部位写真によるメンタルローテーション(以下MR)では生体力学的制限(biomechanical constrain)を受けて運動制約の高い提示角度で反応時間(以下RT)が延長する。報告者らは手足写真(手掌・手背・足底・足背)を6角度(0、 60、 120、 180、 240、 300度)で提示する実験を行い、手掌写真のRTに制限による遅延が認められたのに対して、手背写真のRTは180度が最も遅く、この角度を頂点とする左右対称となった(上田・成瀬、2019)。この特徴は文字刺激を用いた場合と同様であり。部位表裏を用いたMRから視覚的イメージの使用など個人傾向を把握できる可能性がある。しかしながら、従来、MRはRTを指標とする場合が多く測定機器が必要となるため集団実施が難しい。本研究では、刺激画像の提示時間を一律にして左右同定の確信度を求め、100mmアナログスケールによる回答に上記の左右対称(手背)/非対称性(手掌)が現れるかを検証した。1000msと1500msの2種類の提示時間を用いて、待機画面(2000ms)→刺激画面(1000または1500ms)→回答画面(5000ms)で1試行を構成し、部位(手掌・手背)×左・右×6角度×2回の合計48試行を実施した。1000mm提示条件に43名、1500㎜提示条件に41名の大学生が参加した。二元配置分散分析の結果、提示時間1000mmの場合、交互作用が有意であり、下位検定の結果、手背180度と他の5角度との間に、手掌180度と60度との間に有意差がそれぞれ認められた。提示時間1500mmの場合、角度と部位の主効果が有意であり、下位検定の結果、180度と0度、60度、300度との間に有意差が認められ、手背の確信度は手掌より有意に高かった。以上の結果から、提示時間1000mmの場合に左右対称(手背)/非対称性(手掌)が明瞭に得られた。</p>
著者
河野 洋
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.71, 2021

<p>【目的】アスリートに向けられるインターネット上のネガティブなコメント(誹謗中傷・「炎上」等)の実態を明らかにするため、実際に投稿されたコメントデータを基に調査を行った。MDS(多次元尺度構成法)によってインターネット上の議論を図示し、ネガティブなコメントの存在を示すとともにその特徴について考察をした。 【方法】2020年8月・9月に、Yahoo!ニュースに掲載された大坂なおみ選手に関する記事に投稿されたコメントデータを準備した。このデータは、BLM運動の渦中で開催されたウエスタン&サザンオープンおよび全米オープンを事例とすることを念頭に選定した。はじめにコメントデータの形態素解析を行い、コメント中に出現する語と出現回数の一覧を取得した。次に、「大坂選手」「なおみさん」「こいつ」など、文脈から大坂選手を示すと判断される21語を選定し、それらの語を含むコメントを分析用データとして抽出した。このデータについてMDSによる出現語のマッピングを行い、距離に基づいてクラスタリングを行った。 【結果】分析用データとして3,756件のコメントが抽出された。MDSで出現語を2次元上にプロットした結果、議論のまとまりを表す6つのクラスターが作成された。マップを構成する軸はそれぞれ「大坂選手に対してポジティブかどうか」「テニスに関する議論かどうか」として解釈された。大坂選手を示すポジティブな語として「なおみちゃん」、ネガティブな語として「女(『この女』『わがまま女』等)」が認められた。 【考察】大坂選手に対するネガティブなコメントはMDSで示されたマップの半分以上で存在し、それらを誘発している議論として特徴の異なる3つのパターンが認められた。特に、「スポーツ選手」としての大坂選手はBLM運動に関わって試合をボイコットしたことに対する「炎上」が認められた。</p>
著者
村田 優太郎 竹田 唯史 近藤 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.71, 2021

<p>モーグルスキーとは、2つのジャンプとコブの滑走において、ターン点、エアー点、スピード点の合計点数を競う競技である。モーグル競技に関する研究は少なく、竹田ら(2011)は、バンクーパーオリンピック女子モーグル決勝におけるタイム分析を報告している。そこで、本研究では、日本で開催されたワールドカップにおける決勝出場者のタイム・技術分析を行うことを目的とする。</p><p> 研究方法は、1)FISフリースタイルスキーワールドカップ秋田たざわ湖大会男子モーグル第1戦(2020年2月22日、たざわ湖スキー場)を対象とし、1〜6位までをスーパーファイナル群、7〜16位までを決勝群として、二群における滑走タイム、スピード点、エアー点、ターン点、合計点の平均値と標準偏差を求め比較した。平均値の差の検定には、対応のないt検定によって行い、有意水準は5%未満とした。また、当該大会に出場し27位となった筆者の各得点との比較を行った。2)1〜3位の選手、および筆者のビデオ映像を用いて各セッションにおける滑走タイムを算出した。各セクションの区分は、「トップセクション」、「第1エアー」、「ミドルセクション」、「第2エアー」、「ボトムセクション」とした。3)1〜3位の選手と筆者の滑りのビデオ映像に基づき、技術分析を行い、これらによって筆者の技術的課題を明らかにした。</p><p> 分析の結果、スーパーファイナル群と決勝群のエアー点、ターン点、総合得点において有意な差がみられた(p<0.01)。このことから、決勝群がスーパーファイナルに進出するためには、エアー点とターン点の向上が重要であることが示唆された。タイム分析の結果、筆者は、上位3選手を比較すると、主に第一セクションのタイムが遅いということが明らかになった。また、エアーの選択、ミドルセクションにおける後傾姿勢によるターンの乱れなどの技術的課題も明らかになった。</p>
著者
江藤 真生子
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.71, 2021

<p>本研究の目的は、ICTを活用したマイクロティーチングの実践における小学校教員志望学生の授業力量(教授技術・TPACK:Technological Pedagogical Content Knowledge)を事例的に明らかにすることである。</p><p>調査は、国立教員養成系大学教育学部の教科の指導法に関する科目を受講した学生(22名)を対象とした。当該科目におけるICTを活用したマイクロティーチングの実践を分析した。学生は、運動領域ごとにグループを編成し、各グループでICTを用いる場面の設定や使用する動画の作成などの準備を経て、ICTを活用したマイクロティーチングを行った。マイクロティーチングの実践をVTR撮影し、教師役の学生(各グループ代表1名)の教授技術をテクスト化した。テクスト化した学生の教授技術を、体育授業における教師行動(高橋ら、1991)に分類した。また、マイクロティーチングの実践に対して、理解度と適切性の観点から児童役の学生による評価を行った。さらに、学習指導案と授業後の省察の記述の記録から、TPACK(Koehler and Mishra,2009)に相当する内容を抽出した。</p><p>実践されたマイクロティーチングは、以下の通りとなった。すべてのマイクロティーチングの場面は、鈴木(2019)が示す活動提示場面であった。活動提示場面は、手本の動きの動画を見たり、学習者の動きのイメージをつかませたりすることをねらいとした場面であった。学生が活用した機器は、PC(パワーポイント)、タブレット端末(iPad)、大型提示装置であった。それぞれの機器の操作と共に、分析的発問、説明、励ましといった教授技術がみられた。また、TPACKに関する領域の知識が抽出された。なお、詳細は当日に発表する。</p>