- 著者
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宇野 昌明
- 出版者
- 医学書院
- 雑誌
- Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.10, pp.933-934, 2011-10-10
最近の医学生が(医学生には限らないらしい)教科書を買わないことは,皆さんもよく知っていると思う.医学生に講義や実習でどんな教科書をもっているかを尋ねると,『year note』,『ステップ』,『チャート』などを見せてくれるが,私が指定した教科書をもっている学生に遭遇することは少ない.当大学の1学年は100~110人前後であるが,基本である内科の教科書(朝倉書店の『内科学』がほとんど)をもっている学生は60人前後であり,大学の書店で売れる脳神経外科の教科書数は大体40冊/年であるという.先日,各学年の学生代表との懇談会があり,なぜ教科書を買わないのか,との話題になった.学生の言い分は①教科書は値段が高い,②先輩から,教科書は買わなくても試験は通ると言われた,③試験勉強は授業プリントと過去の試験問題を復習するだけでよい,④教科書の改訂版がすぐに出て情報が古くなる,などであった.このような言い訳を学生がしている状況で,いつも私が授業後に学生から指摘されるのは,①授業プリントの字が小さくて読みづらいところがある,②写真が見にくい,などである.私もそのようなことがないように授業プリントを改訂してきたが,よく考えると,プリントの内容は教科書の内容のpick upであり,代表的な写真は教科書にきれいなものが掲載されている.要するに学生が自分で教科書を復習すれば問題ないことである.
しかし,教える側にも問題があることが指摘されている.例えば,①Power Pointのスライドのみの授業スタイルでよいのか?,②長年にわたり同じ内容の授業をしていないか?,③学生が授業中にどう反応しているのかを確認しているか?,そしてこれが一番の問題点かもしれないが,④そもそもなぜ指定された教科書が必要なのか?,どのような使い方をすべきかを学生に説明しているか?,臨床や研究が忙しくて,つい教育にかける時間をサボっていないか,自分も大いに反省する必要がある.