- 著者
-
里見 淳一郎
永廣 信治
- 出版者
- 日本脳神経外科コングレス
- 雑誌
- 脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.1, pp.42-51, 2016 (Released:2016-01-25)
- 参考文献数
- 42
- 被引用文献数
-
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硬膜動静脈瘻 (以下DAVF) は後天性疾患であり, 多くの症例が血管内治療の対象となる疾患である. 本疾患の病態把握と治療適応, 適切な治療方法についてレビューする. DAVFの自然歴は, これまで静脈還流異常 (静脈洞閉塞, 皮質静脈逆流, 静脈うっ滞) が悪化に関与する因子として長く認識されてきたが, 近年, DAVFの発症形式が自然歴に大きく影響するとした報告が相次いでいる. また, 自然消失に関して, DAVFは静脈還流路の閉塞性変化を伴いつつ消失に向かう症例も多い. 治療適応に関して, 治療によるメリットが自然経過, 周術期合併症によるデメリットを上回るためには, 発症形式, 血管撮影所見, 罹患部位等, さまざまな因子を総合的に判断することが重要である. 治療方法に関して, 血管内治療は, 短絡部位より近位の動脈側の塞栓はシャント量減弱に一定の効果を有するが, 根治に至らないことが多い. 一方で, 経静脈的塞栓は, 短絡部位の流出側を閉塞する手技であり, 根治の率が高いものの, 治療遂行にあたっては, 皮質静脈逆流を残さないよう努める必要があり, また, 正常静脈還流に関与する部位の塞栓は避けなければならない. 前頭蓋窩, 頭蓋頚椎移行部など, 外科的治療が血管内治療より容易で適切と考えられる部位もあるが, 今後, 液体塞栓物質 (NBCA, Onyx) を用い経動脈的シャント閉塞を目指した根治療法の発展が期待されている.