著者
水谷 徹 小島 英明
出版者
日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.331-337, 2004-09-30
被引用文献数
1 1

脳動脈全体が部分的に血栓化を伴って巨大化する本幹動脈瘤の存在は, 以前から知られていたが, 長期予後, 臨床経過はながらく不明であった. 診断時にはかなりの大きさに成長している場合が多く, giant fusiform aneurysm, megadolichoartery, giant serpentine aneurysmなどと呼称されてきた. これは, われわれの行った脳血管の本幹動脈瘤の分類でtype3に相当する. こうした部分血栓化巨大本幹動脈瘤の発生, 増大に関して, 今まで著者らが得た知見を報告する. 対象, 方法 1987年から2000年までの間に, 12例の部分血栓化した症候性の本幹動脈瘤を経験し, 最長10年のfollow upを行った. 正確な頻度は不明であるが, われわれの脳神経外科施設において, だいたい入院患者700-800人に1人の割合であった. 患者はすべて男性で, 初診時の年齢は42-71歳であった. 動脈瘤の存在部位は脳底動脈が10例で, 椎骨動脈が2例であった. 軽度の高血圧, 高脂血症を有するものが一部存在した.
著者
中島 義和 山田 和雄 甲村 英二 藤中 俊之 吉峰 俊樹
出版者
日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.443-447, 2004-11-30

AVMに対する治療として安全に施行されれば外科的全摘出が現在最も確実なものと考えられる.AVMの全摘出の確認には脳血管造影検査がgold standardと考えられるが,術後脳血管造影検査にて全摘出を確認したにもかかわらず再発する例が存在することが報告されている.今回私どもは,開頭摘出術後の脳血管造影検査にて全摘出が確認された小児AVM例で,その後の経過中にAVMが再発した2例を経験した.このような症例への対応,問題点について文献的考察を加え報告する.<症例1> 男児.初発時年齢5歳.昭和62年3月,頭痛発作が出現.翌日も頭痛継続するため近医を受診したところ,左後頭葉に脳室内出血を伴うAVMが指摘された(Fig. 1).脳血管造影検査で左後大脳動脈分枝をmain feederとするparasplenial AVMが認められた.左内頸動脈後交通動脈分枝部に,4mm大の嚢状動脈瘤も認めた.同年4月同AVMに対し摘出術施行するも全摘には至らず,当科にて同年5月残存AVMの全摘出術を施行した.すなわち,feederである後大脳動脈分枝とchoroidal arteryを確認,凝固しAVMを周囲から剥離すると,脳室壁を走っていたdraining veinが変色したので,この時点でdraining veinを凝固切断し,AVMを全摘出した.
著者
案田 岳夫 米倉 正大 馬場 啓至 馬場 史郎 吉田 光一 小野 智憲 鎌田 健作 戸田 啓介 陶山 一彦
出版者
日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.426-430, 2004-11-30
被引用文献数
2

長崎県離島(対馬,壱岐,五島)には脳神経外科手術施設が存在しないため,脳神経外科的治療を要する患者が発生した場合,以前からヘリコプター搬送が利用されており,その大部分が国立病院長崎医療センター脳神経外科に運ばれ治療を受けてきた.近年,その件数は年間約90例となっている.くも膜下出血(SAH)患者も,急性期に当院に搬送されているが,ヘリコプター搬送中,患者は騒音,振動,気温変化,気圧変化などの再破裂の危険に曝されると考えられる.また機内で医師が行いうる医療行為には制限があることも事実である.以上のことから,救急車により搬送される内地発症SAH症例に比較し,離島発症例には予後不良となる要因がより多く存在する可能性がある.そこで,当施設にて治療を受けたSAH症例を離島発症群,内地発症群に分け転帰を比較してみた.
著者
宇野 昌明 里見 淳一郎 鈴江 淳彦 中嶌 教夫 佐藤 浩一 永廣 信治 米田 和英 森田 奈緒美 原田 雅史
出版者
日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.262-266, 2004-07-31
被引用文献数
1 1

米国では脳卒中は心臓発作と同様にbrain attackとして認識され, 発症からできるだけ早く脳卒中専門の施設に搬送することを国民に啓蒙し, かつ国をあげてのキャンペーンを展開している. 本邦では必ずしも脳卒中の診断から治療までがスムーズに施行されているとはいえず, 急性期治療の遅れが指摘されてきた. われわれは脳卒中急性期の診断と治療を迅速かつ正確に行うために1999年11月よりstroke care unit(SCU)を開設した. 今回SCUに入院した急性期脳卒中患者に対して, 24時間体制でstroke MRIを施行し, 脳卒中, 特に脳梗塞の診断と治療成績について分析したので報告する. 対象と方法 1999年11月より2002年9月までに当院のSCUに入院した急性期脳卒中患者295例のうち, 脳虚血と診断した175例(59.3%)を対象とした. 175例の脳梗塞の病態別症例数はアテローム血栓性脳梗塞44例(25.1%), 心原性脳梗塞70例(40%), ラクナ梗塞57例(32.6%), その他4例(2.3%)であった.