著者
飯村 大智 安井 美鈴 横井 秀明
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.354-368, 2017-12-15

言語聴覚士(以下,ST)を目指す吃音者にとって,吃音の問題は様々な障壁となり,ST養成校における支援が求められる.本調査ではST養成校における吃音者の困難・配慮および吃音STの実態調査を質問紙法により実施した.ST養成校に在学経験のある吃音者27名(男性22名,女性5名,平均年齢29.0±5.3歳)からの回答が得られた.回答者は,臨床実習や検査演習での検査の教示,授業での音読,就職活動や入試での面接など,様々な場面で困難を感じていることがわかり,「吃音の認知」「吃音の理解」「吃音を考慮した評価」「代替手段の利用」などの配慮を必要としていることがわかった.自身の吃音を契機に養成校に入学する者は多いものの,入学後に吃音領域の少なさを知る者も多かった.教員などへの相談により心理的にプラスの影響があったり,環境整備が行われる例も多くみられたが,教員へ相談ができない例もあり,教員の積極的な吃音学生への介入が求められる.