著者
飯村 大智
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.410-415, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1

吃音が就労にさまざまな影響を与えることが国外の研究で指摘されているが,本邦で吃音に関する就労調査はごくわずかである.本調査では吃音者55名を対象に就労に関する質問紙調査を実施したので報告する.結果,多くの回答者は吃音が職業選択に影響を与え,就労後には電話を始めとした場面で困難を抱えていることが示唆された.半数の回答者が吃音の理解を周囲から得られており,吃音のカミングアウト(周囲に表明)をしていない人よりもしている人のほうが,また事務職よりも専門・技術職の人のほうが,より吃音の理解を得られていることが示された.「吃音を理解する」「言葉が出るまで待つ」のような環境面での合理的配慮の必要性が示唆される.
著者
飯村 大智 安井 美鈴 横井 秀明
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.354-368, 2017-12-15

言語聴覚士(以下,ST)を目指す吃音者にとって,吃音の問題は様々な障壁となり,ST養成校における支援が求められる.本調査ではST養成校における吃音者の困難・配慮および吃音STの実態調査を質問紙法により実施した.ST養成校に在学経験のある吃音者27名(男性22名,女性5名,平均年齢29.0±5.3歳)からの回答が得られた.回答者は,臨床実習や検査演習での検査の教示,授業での音読,就職活動や入試での面接など,様々な場面で困難を感じていることがわかり,「吃音の認知」「吃音の理解」「吃音を考慮した評価」「代替手段の利用」などの配慮を必要としていることがわかった.自身の吃音を契機に養成校に入学する者は多いものの,入学後に吃音領域の少なさを知る者も多かった.教員などへの相談により心理的にプラスの影響があったり,環境整備が行われる例も多くみられたが,教員へ相談ができない例もあり,教員の積極的な吃音学生への介入が求められる.
著者
飯村 大智
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

話しことばの流暢性の障害である吃音は認知度の低さや支援のエビデンス不足のため、社会的不利となりやすい。特に就労において大きな活動・参加制約を受けていることが報告されており、ICFや社会モデルに基づいた吃音者の支援が求められている。本研究では、吃音のある人が就労で直面している社会的障壁や雇用状況、吃音の否定的認識・態度、支援の実態についてを、吃音のある人と彼らを取り巻く周囲の両側面から社会心理学的・実験心理学的手法を用いて検証する。包括的な評価・支援を目的として、併存する発話・行動特性との関連も調べる。これらより吃音のある人が最大限の能力を発揮できる要因や環境を探索し理論的枠組みを作成する。
著者
飯村 大智 朝倉 暢彦 笹岡 貴史 乾 敏郎
出版者
日本認知心理学会
巻号頁・発行日
pp.20, 2014 (Released:2014-10-05)

吃音症と呼ばれる言語障害の背景には発話運動制御の問題が示唆されている。本研究では、吃音者は聴覚フィードバックへの依存度が高いこと、及びその背景としてフィードバックの予測・照合の精度が悪いという2つの仮説を立て、行動実験を行った。実験は、自分の声が遅れて聞こえる状態を順応させた上で(0ms;順応なし、66ms、133ms)、自分の声の同時性判断(0ms~150ms)が各条件でどのように変化するかを調べた。結果は非吃音者と比べて吃音者で順応によって同時性判断の判断基準が大きく変化し、フィードバックに依存した運動制御を行っていることが示唆された。一方で同時性判断の精度は非吃音者との有意差はなかったが、吃音者で回答の判断基準と精度の両変数には有意な相関係が見られた。吃音者では聴覚フィードバックへの依存と予測・照合の精度の問題には関連性があり、吃音者に特異的な発話の運動処理の問題が推察される。