著者
安井 裕次 鈴木 啓太郎 岡留 博司 奥西 智哉 橋本 勝彦 大坪 研一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.592-603, 2004-11-15
被引用文献数
3 10

発芽玄米および発芽大麦を配合した混合A,また,発芽玄米,発芽大麦さらにビール酵母を加えた混合Bを2軸エクストルーダーにより膨化処理を行った.生理機能性および消化性に優れた多目的食品素材の開発を試みた.得られた結果は以下の通りである.<br>(1) 混合膨化Bの膨化粉末では,粒径が膨化前107.6μmに対し,膨化後では97.7μmとなり,各膨化粉末は粗い粒径の体積が減少し,粒径の細かい部分へと移行した.<br>(2) 発芽処理工程により,発芽玄米および発芽大麦の一般生菌数が多くなるが,膨化処理により300(cfu/g)未満となり,大腸菌群も検出されなくなった.<br>(3) 発芽玄米,混合A,混合Bの膨化粉末は,精米粉よりも消化性が優れていることが確認された.<br>(4) 膨化処理により,脂質の分解が抑制されることにより脂肪酸度が増加しなかった.<br>(5) 各混合膨化製品は,膨化発芽玄米と比べてフィチン酸,イノシトール,フェルラ酸,食物繊維を多く含有していた.<br>(6) 高血圧自然発症ラットを用いた血圧試験では,投与日数28日目において,膨化精米粉20%置換に対し,膨化発芽玄米粉,混合膨化粉Bが有意に低い値を示した.膨化発芽玄米粉,混合膨化粉Bは高血圧抑制作用を持つことが明らかになった.<br>(7) 官能検査においては,混合膨化A30%配合パンは,小麦粉パンと比較し食感(P<0.05)と甘さ(P<0.05)で有意に優れていた.各膨化粉末30%配合パンは,小麦粉に比べ柔らかく,しっとりとした食感という評価を得ることが出来た.また,和菓子の官能検査では,混合膨化B20%配合は,小麦まんじゅうとの比較で香り(P<0.05),食感(p<0.05)で有意に優れていた.いずれも食品として高い評価が得られた.