著者
中村 澄子 鈴木 啓太郎 伴 義之 西川 恒夫 徳永 國男 大坪 研一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.79-87, 2006-09-01
参考文献数
37
被引用文献数
7 7

いもち病はイネの最も重要な病害である.近年,いもち病真性抵抗性遺伝子型を異にする複数の同質遺伝子系統を混合栽培するマルチラインの利用が試みられ,平成17年産から新潟県産コシヒカリは,「コシヒカリ新潟BL」に全面的に作付転換された.本研究では,「コシヒカリBL」と従来のコシヒカリを識別するために,RAPD法,およびSTS化RAPD法を用い,イネいもち病真性抵抗性遺伝子Pia,PiiおよびPita-2を識別するSTS化プライマー群を開発した.これらのマーカーの染色体上の座乗位置の特定ならびに同質遺伝子系統24品種,公表遺伝子型が明確な日本栽培イネ51品種を用いたPCR実験の結果から,開発したマーカーが確かに標的とするいもち病抵抗性遺伝子を識別することを確認した.また,複数のプライマーを併用することにより,1回のPCRで数種類のBLを識別する実用的なマルチプレックスPCR用プライマーミックスを開発した.本研究において開発したDNAマーカーを用いることにより,「コシヒカリ新潟BL」を他県産コシヒカリ,および日本栽培稲69品種と識別することが可能である.
著者
長田 隆 中野 千紗 大坪 研一
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.153-159, 2015-06-15 (Released:2015-11-16)
参考文献数
7

常温流通するpH 4.6未満のトマトジュースにおいて,Themoanaerobacterium属芽胞を指標に加熱殺菌条件を算出した結果,121℃,1.5分の加熱処理が必要で,現行の121℃,0.7分は殺菌不足であった.本研究は加熱殺菌条件の緩和を目的に,pHを低く管理することによって,商業的無菌性に及ぼす効果について検討した.トマトジュースのpHを4.4以下に管理できれば,Themoanaerobacterium属芽胞が発育しないため,B.subtilis group芽胞を加熱殺菌指標として,D121℃値は0.12分,z値は11.2℃であり,F121℃値は0.6(D値×5倍)分まで緩和することが可能であった.
著者
大坪 研一 中村 澄子 今村 太郎
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農藝化學會誌 = Journal of the Agricultural Chemical Society of Japan (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.388-397, 2002-04-01
被引用文献数
29 36

精米の袋に品種,産地,生産年を表示することが義務づけられたため,客観的方法によって表示の正否を確かめるための技術開発が必要とされている.そこで,農業試験場の基準品種を試料とし, PCR法による実験に供試した.有望なRAPDプライマーを用いて品種識別バンドを選定し,アガロースゲルから切り出したDNAを大腸菌に組み込んで増幅し,その塩基配列を決定した.その配列のRAPDプライマー部分から延長して15~29量体のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した.こうして作成したSTS化プライマーを組み合わせることにより,「コシヒカリ」を他の品種と識別するためのポジティブプライマーセットおよびネガティブプライマーセットを開発した.これらのセットを用いるPCRにより,全国の33産地の「コシヒカリ」では同一のDNAパターンが得られ,「コシヒカリ」と他の49品種との識別が可能であることが明らかとなった.このプライマーセットの開発により, 1粒の米試料による「コシヒカリ」の同定が可能であるばかりでなく,他品種米の混入も簡易かつ明瞭に検出することが可能となった.
著者
伊藤 満敏 大原 絵里 小林 篤 山崎 彬 梶 亮太 山口 誠之 石崎 和彦 奈良 悦子 大坪 研一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.576-582, 2011-12-15
参考文献数
31
被引用文献数
2 7

有色素米8品種(赤米4種,紫黒米4種)と対照のコシヒカリについて,抗酸化能(活性酸素吸収能(ORAC)およびDPPHラジカル消去能)の測定,ならびにフォーリン-チオカルト法を用いた総ポリフェノール含量の測定を行った.有色素米の抗酸化能は総ORACが58.0-169.4 &mu;mol TE/g-dry weight,DPPHラジカル消去能が10.8-52.2 &mu;mol TE/g-dry weightの範囲であり,いずれも「コシヒカリ」の24.9および2.5 &mu;mol TE/g-dry weightに比べて著しく高かった.総ポリフェノール含量とH-ORACおよびDPPHラジカル消去能には高い正の相関(<I>r</I>=0.984および<I>r</I>=0.948,<I>p</I><0.01)があり,H-ORACとDPPHラジカル消去能との相関性も高かった(<I>r</I>=0.946,<I>p</I><0.01).また赤米からはプロアントシアニジンが,紫黒米からはアントシアニンが検出され,これらポリフェノール成分含量と抗酸化能との相関も高かった.5品種の有色素米において,収穫年の違いにより抗酸化能およびポリフェノール含量は増減したが,品種間の大小関係への影響は少なかった.以上の結果より,有色素米が抗酸化能の供給源として有用であり,その主要な抗酸化成分はポリフェノールであることが示唆された.
著者
大坪 研一
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.393-398, 2002-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2
著者
今村 太郎 岡留 博司 大坪 研一 宮ノ下 明大
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.61-66, 2006-02-28
参考文献数
21

新形質米7品種とコシヒカリの玄米について,品種間の相違がノシメマダラメイガ,バクガ,コクゾウムシの発育に及ぼす影響を調べた.その結果,それぞれの貯穀害虫について品種の違いは,発育期間や羽化直後の成虫の体重に影響することが明らかとなった.その一方で,品種の違いはいずれの昆虫の生存率にも明確な影響を与えなかった.「春陽」と「夢十色」はすべての貯穀害虫に対して発育期間の延長,成虫体重の減少などの耐虫性を示す傾向が顕著であった.このような耐虫性傾向はこれらの品種の玄米が含有するアミロースの量が要因の一つである可能性が示唆された.
著者
奥西 智哉 大坪 研一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.76-77, 2008-02-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
6 6

玄米の開放貯蔵下での過酸化物価は貯蔵開始後すぐに増加し,最大値はおよそ50meq/gを示した.カルボニル価は,およそ10日後から上昇を開始した.脂肪酸度は,30日後に増加し始めた.過酸化物抑制のために最も効果的な方法は暗所保存で,脱酸素剤の効果は補助的であった.
著者
松井 崇晃 石崎 和彦 中村 澄子 大坪 研一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.204-211, 2013-05-15 (Released:2013-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
5

イネにおいてLgc1遺伝子を用いて胚乳貯蔵タンパク質中のグルテリンを低下させた低グルテリン品種が開発されている.本報告ではLgc1座に関する準同質遺伝子系統対を2組用いてLgc1遺伝子による米の低グルテリン化が米粉の特性や米飯の食味に与える影響を検討した.今回用いた準同質遺伝子系統対では低グルテリン系統で味度値の低下が見られ,米飯の食味低下が示唆された.また,低グルテリン系統のアミロース含有率は通常のタンパク質組成の系統を約1ポイント上回った.ラピッド·ビスコ·アナライザーを用いた糊化物理特性において低グルテリン型の系統では最終粘度が有意に上昇し,コンシステンシーが増加した.テンシプレッサーを用いた米飯の物性測定においては米飯表層の粘りが低グルテリン型の系統で有意に低下し,硬さと粘りのバランス度においても有意な低下が認められた.15°Cにおける白米粒の吸水においては低グルテリン化による有意な差は認められなかった.一般に低グルテリン品種は通常のタンパク質組成の品種に比べて米飯の食味が不十分であることがこれまでにも指摘されている.今回の測定において低グルテリン系統と通常のタンパク質組成を持つ系統との間に見られた差がタンパク質組成の変化だけによるものとは限定できなかったが,低グルテリン品種の米飯の食味や加工特性の違いの一因と考えられた.
著者
大坪 研一
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.93-102, 2014-05-20 (Released:2018-01-22)
参考文献数
60
被引用文献数
2

米の食味などの品質評価,品種判別および加工利用に関する研究を行った。米の食味を物理化学的に評価する方法として,テンシプレッサーによる一粒炊飯測定方法,RVAによる米の物性および老化性の推定方法および米飯の外観,香り,味,粘り,硬さの各評価を理化学的測定で行った結果を多変量解析することによる食味の多面的理化学評価方法を開発した。米の酵素阻害タンパク質RASIのアミノ酸配列を決定し,3種類の酵素阻害タンパク質やアビジンの遺伝子を導入した虫害抵抗性稲を作出した。米品種の判別方法として,精米を試料として鋳型DNAを抽出精製し,適正なプライマー共存下でPCRを行う方法を開発した。鋳型DNAの調製方法として,酵素法およびその改良法を開発することにより,試料が米飯,米菓,日本酒などの場合においても,PCRによる原料米の判別を可能にした。米の消費拡大を目的として,新形質米を中心に,膨化玄米,発芽玄米,米粉パンなど各種の機能性米加工食品の開発に取り組んだ。
著者
豊島 英親 岡留 博司 大坪 研一
出版者
瑞穂協会
雑誌
食糧管理月報
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.p41-45, 1994-02
著者
大坪 研一 中村 澄子 今村 太郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.388-397, 2002-02-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
20 36

精米の袋に品種,産地,生産年を表示することが義務づけられたため,客観的方法によって表示の正否を確かめるための技術開発が必要とされている.そこで,農業試験場の基準品種を試料とし, PCR法による実験に供試した.有望なRAPDプライマーを用いて品種識別バンドを選定し,アガロースゲルから切り出したDNAを大腸菌に組み込んで増幅し,その塩基配列を決定した.その配列のRAPDプライマー部分から延長して15~29量体のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した.こうして作成したSTS化プライマーを組み合わせることにより,「コシヒカリ」を他の品種と識別するためのポジティブプライマーセットおよびネガティブプライマーセットを開発した.これらのセットを用いるPCRにより,全国の33産地の「コシヒカリ」では同一のDNAパターンが得られ,「コシヒカリ」と他の49品種との識別が可能であることが明らかとなった.このプライマーセットの開発により, 1粒の米試料による「コシヒカリ」の同定が可能であるばかりでなく,他品種米の混入も簡易かつ明瞭に検出することが可能となった.
著者
中村 澄子 鈴木 啓太郎 原口 和朋 大坪 研一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.63-66, 2007-06-01
被引用文献数
1
著者
大坪 研一 中村 澄子 諸岡 宏 藤井 剛 布施 隆 川崎 信二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.262-267, 1999-04-15
被引用文献数
10 12

最近需要が増加しつつある市販のおにぎりや弁当,調理済み米飯類の原料米の品種表示と内容の確認をするための客観的技術の開発を行った.<BR>国内作付け上位10品種の精米を簡易炊飯し,それぞれの米飯1粒を試料とし,α-アミラーゼおよびプロテイナーゼKによって処理した後に,DNAをフェノール抽出し,10量体5種類および12量体1種類のプライマーを用いたPCRによって増幅した後,電気泳動に供し,パターンの比較を行った.その結果,米飯1粒を試料として,国内産上位10品種の品種を識別することが可能となった.
著者
安井 裕次 鈴木 啓太郎 岡留 博司 奥西 智哉 橋本 勝彦 大坪 研一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.592-603, 2004-11-15
被引用文献数
3 10

発芽玄米および発芽大麦を配合した混合A,また,発芽玄米,発芽大麦さらにビール酵母を加えた混合Bを2軸エクストルーダーにより膨化処理を行った.生理機能性および消化性に優れた多目的食品素材の開発を試みた.得られた結果は以下の通りである.<br>(1) 混合膨化Bの膨化粉末では,粒径が膨化前107.6μmに対し,膨化後では97.7μmとなり,各膨化粉末は粗い粒径の体積が減少し,粒径の細かい部分へと移行した.<br>(2) 発芽処理工程により,発芽玄米および発芽大麦の一般生菌数が多くなるが,膨化処理により300(cfu/g)未満となり,大腸菌群も検出されなくなった.<br>(3) 発芽玄米,混合A,混合Bの膨化粉末は,精米粉よりも消化性が優れていることが確認された.<br>(4) 膨化処理により,脂質の分解が抑制されることにより脂肪酸度が増加しなかった.<br>(5) 各混合膨化製品は,膨化発芽玄米と比べてフィチン酸,イノシトール,フェルラ酸,食物繊維を多く含有していた.<br>(6) 高血圧自然発症ラットを用いた血圧試験では,投与日数28日目において,膨化精米粉20%置換に対し,膨化発芽玄米粉,混合膨化粉Bが有意に低い値を示した.膨化発芽玄米粉,混合膨化粉Bは高血圧抑制作用を持つことが明らかになった.<br>(7) 官能検査においては,混合膨化A30%配合パンは,小麦粉パンと比較し食感(P<0.05)と甘さ(P<0.05)で有意に優れていた.各膨化粉末30%配合パンは,小麦粉に比べ柔らかく,しっとりとした食感という評価を得ることが出来た.また,和菓子の官能検査では,混合膨化B20%配合は,小麦まんじゅうとの比較で香り(P<0.05),食感(p<0.05)で有意に優れていた.いずれも食品として高い評価が得られた.