著者
安元(森) 加奈未
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.344-344, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
5

ハチミツは,私たちの食卓でも身近な食品であるが,植物毒が混入したハチミツによる中毒事故は世界中で多数報告されている.特に,野生のハチミツを食べる風習のあるトルコの黒海沿岸では,ツツジ科植物に含まれる有毒成分グラヤノトキシンの混入による中毒が頻出している.また,ニュージーランドでも19世紀後半から有毒成分の混入による中毒事例が多数報告されており,その原因は現地で“tutu”と呼ばれるドクウツギ科の低木Coriaria arboreaに含まれる成分で,精神撹乱・記憶喪失などの症状を引き起こす急性神経毒のツチン(1)であると考えられてきた.ハチミツへのツチンの混入は,tutu の樹液を吸う昆虫が分泌する甘露をミツバチが集めることによるとされるが,一方でツチンのみを対象として安全性を評価する方法の妥当性や未解明成分の有無などの疑問も長年残されていた.本稿ではニュージーランドのツチン汚染ハチミツに含まれる更なる成分が,Larsenらによって明らかにされたので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Sutherland M. D. et al., J. Sci. Technol., Sect. A, 29A, 129-133 (1947).2) McNaughton D. E. et al., HortResearch Client Report, No. 24884 (2008). http://maxa.maf.govt.nz/sff/about-projects/search/L07-041/technical-report.pdf3) Larsen L. et al., J. Nat. Prod., 78, 1363-1369 (2015).4) Fields B. A. et al., Food Chem. Toxicol., 72, 234-241 (2014).5) Wouters F. C. et al., Angew. Chem. Int. Ed.Engl., 53, 11320-11324 (2014).