著者
高橋 静昭 安原 治機 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.1080-1086, 1987-10-15
被引用文献数
1

模擬試験の得点や共通一次の自己採点などから 入試における合格最低点を推定する場合 合格者の学力の水準と入学の難しさの2つは 合格最低点とは微妙に異なる.それは 模擬試験の得点等と大学入試得点の相関係数の値が1より小さいことに起因する.もし相関係数が1ならば 合格最低点の入試得点者のみが 最低点に対応する模試の境界得点者となる.しかし 相関係数が1より小さくなるに伴って 合格最低点よりやや高い入試得点者と低い得点者の双方が模擬試験の対応する境界得点となることが多くなる.合格率が1/2以下のときには 高得点者の方が少ないので前者の人数が後者を上まわる.したがって模擬試験の対応境界得点近傍の受験者の合格率は 1/2より小さくなる.さらに同様の関係で 合格最低点近傍の受験者の模試の平均点は模試の境界得点より低くなる.逆に 合格率が1/2を超えているときは 模試の境界得点の受験者の合格率は1/2より大きくなる.これらの関係は 従来公表されている難易度では十分に説明されていない.本論文では 模試得点や自己採点等の変数Xとそれによって評価される大学入試得点Yが 2次元のガウス分布に従うものとしてモデル化し 合格最低点 最低合格者の水準および合格難易度の3つを定量的に定義し検討する.さらにこの統計モデルを用いて 合格者の中の入学手続者の入試得点上の分布を表現し 入学手続の予測に応用することを提案する.