著者
亀井 了 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, 1996-09-18

聾者のコミニケーションの一手段である手話は、手指動作と顔の表情、口形、うなずきなどによって表現される非手指動作によって構成される。著者らは手話工学の立場から、手話を工学および言語学的に解析し、日本語と手話の相互翻訳システムの構築を行っているが、現在のシステムの手話表示体系では、手指動作の表示のみにとどまっている。そこで、本報告では、システムの手話表示に非手指動作を組み込む方法について検討する。
著者
寺内 美奈 藤森 憲男 神田 和幸 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.94, no.102, pp.69-74, 1994-06-18
被引用文献数
3

近年,聴覚障害者の情報伝達手段の一つである手話への関心が高まり,手話の習得を志す人々が年々増加している.一般的に手話を学習する方法として,手話講習会や手話サークルへの参加,TV講座や手話の本の利用などがある.我々は手話を学習するための補助手段として,パーソナルコンピュータによる手話学習システムの構築を目指している.本報告では,手話学習システムを構築するにあたり,従来の手話の学習方法について調査し,本システムにおける学習日標を明確化する.また,手話を学習する上で重要である手話調動を習得するための一機能として,以前我々が報告した液晶シャッターを用いる3D手話アニメーションを採用することについて検討する.さらに,その立体視によるアニメーションでの学習効果を確認するため,初期実験として,3Dアニメーションによる表示された手話語彙について,聴覚障害者を含む20名の被験者により評価実験を行ったので,その結果についても報告する.
著者
中園 薫 角田 麻里 長嶋 祐二 細野 直恒
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.221-232, 2011-01-01

筆者らは,外国人や聴覚障害者など,音声でのコミュニケーションが不自由な人を対象とした,コミュニケーション支援システム,VUTEを開発している.VUTEでは,携帯電子端末等で動画絵記号を表示させることにより,理解度の向上を図る.更に手話的表現を参考とすることにより,特定の国や文化に依存しない動画絵記号をデザインできることを目指している.また,マンガ的表現を取り入れることにより,より豊かな表現力をもつ.本研究の第一段階として,消防や怪我,急病などの救急時におけるコミュニケーションに限定した支援システム,VUTE 2009を試作し,公開した.本論文では,VUTE 2009がユニバーサルにコミュニケーションを支援できるよう工夫した設計方法について述べる.続いて本システムによって救急時の最低限のコミュニケーションが可能であることを評価実験によって確認し,今後のより詳細な評価実験へ向けて問題点を整理する.
著者
長嶋 祐二 原 大介 堀内 靖雄 酒向 慎司
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本研究では、手話の単語レベル、対話レベルから、言語学的な解析や手話工学分野で利用可能な、多用途型日本手話データベースを構築するための方法論の検討、並びに、データベースの構築を目的とする。令和元年度は、前年度までのテスト撮影の結果を踏まえ以下の項目に対して検討を行い本格的な3次元動作と映像のデータの収録を行った。(1)前年度までに撮影した言語資料 1,000単語の検証作業を行い、今年度撮影の方針を検討した。その結果、3次元動作データは、カメラ系と3次元系の同期解析、並びに、CG生成を考慮して、昨年度決めたフレームレートをとした。単語の収録では、表情などの非手指動作の詳細分析を考慮して、正面映像だけだった4Kカメラを左右の両側面を追加した。(2)今年度収録する言語資料は、7月までに手話母語者の研究協力者と共同で候補単語3,800単語のプロンプタ用の映像の撮影を終了した。これと並行して、対話撮影のためのテーマ検討も行った。本格的な収録は、8月から9月にかけて東映東京スタジオで収録した。対話撮影は、8テーマのデータベース収録候補の同期撮影を実施した。単語撮影は、3,873ラベルで総動作単語数では4,965単語の収録を行った。3年間で、合計4,873ラベルで総動作数では6,359単語の収録が完了した。当初の目標の5,000単語を上回る成果が得られた。(3)アノテーション支援システムでは、昨年度までに完成したビュワーの組み込みが完了して、支援部の3次元動作分析部分に着手した。(4)対話データ処理では、追加予算を含めて3対話の3次元動作データの生成が完了し、先行した部分は終了して、追加予算の部分は現在進行している。次年度のデータ公開へ向け単語収録データの分割並びにラベルの張替え作業も進行している。
著者
鈴木 拓弥 小林 真 長嶋 祐二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.3, pp.560-568, 2018-03-01

聴覚障害学生を対象とした授業では,聴覚の代行として視覚情報による支援が中心となる.しかし,実技演習時の細かな操作を教示する場合やタイミングが重要とされる場面では,視覚情報を中心とした手法では不十分な教示状態があることが分かってきた.本論文では,視覚によって提示される情報保障の一部を触覚によって伝達する手法を考案し,教員の実演内容を触覚情報によって提示する教示支援システムSZCAT (SynchroniZed Click Action Transmitter)を開発した.そして,開発したシステムの効果に関する基礎的研究として,従来からの手法と,触覚情報を追加した手法とを比較し,触覚情報提示の有効性を検証した.その結果,触覚情報を追加したことによる視線移動の減少効果や,教示内容の見逃しや誤認識を軽減させる効果について確認できた.
著者
長嶋 祐二
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、3次元アニメーションによる日本手話の形態素語彙辞書の構築を行った。辞書に収録した3次元手話動作は、光学式モーションキャプチャにより収録した。辞書の単語は、提案しているNVSG要素モデルを用いて記述されている。記法結果はSQLiteフォーマットで蓄積し、形態素辞書データベースを構築した。その結果、日本語の意味が分からなくても手話の構成要から検索可能である。共通課題であった、解析ツールでは、MAを構築し手話の音素レベルからNVSG要素モデルを用いて3次元動作記述支援システムを開発した。更に、BVHデータからリアルタイムで3次元手話アニメーションを生成する3Dビューアを開発した。
著者
渡辺 桂子 長嶋 祐二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.1, pp.76-89, 2016-01-01

本論文では,医療用手話単語のデータベースの構築について述べる.手話通訳が必要とされる場面の一つに医療現場がある.医療用の手話単語は既に検討されているが,同じ意味の単語であっても書籍によって表現が異なっている,一般的に普及していない手話表現が多数存在している,手話単語の造語に統一性がないなどの問題点があり,手話表現が一般的に普及していない.著者らは,既存の手話単語の問題点を分析し,よりわかりやすい医療用手話表現を検討した.手話表現のわかりやすさを考慮し,動作の一貫性や表現の統一に注意して手話表現の検討を重ねた結果,1324単語の造語及び既存動作からの作成を行った.作成された手話表現は,全て3次元動作の収録を行い,アニメーション再生できるようになっている.3次元データで保存されているため,未登録単語があった場合,アニメーションの形態素合成で補えるようになっている.また,既存の手話表現とデータベースの手話表現の差異を形態素数を用いて検証した.その結果,手話表現の一致度は少なかった.これは,医療用の手話単語は既存の単語だけなく,部位や形状を用いて,わかりやすくしたためである.
著者
高橋 静昭 安原 治機 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.1080-1086, 1987-10-15
被引用文献数
1

模擬試験の得点や共通一次の自己採点などから 入試における合格最低点を推定する場合 合格者の学力の水準と入学の難しさの2つは 合格最低点とは微妙に異なる.それは 模擬試験の得点等と大学入試得点の相関係数の値が1より小さいことに起因する.もし相関係数が1ならば 合格最低点の入試得点者のみが 最低点に対応する模試の境界得点者となる.しかし 相関係数が1より小さくなるに伴って 合格最低点よりやや高い入試得点者と低い得点者の双方が模擬試験の対応する境界得点となることが多くなる.合格率が1/2以下のときには 高得点者の方が少ないので前者の人数が後者を上まわる.したがって模擬試験の対応境界得点近傍の受験者の合格率は 1/2より小さくなる.さらに同様の関係で 合格最低点近傍の受験者の模試の平均点は模試の境界得点より低くなる.逆に 合格率が1/2を超えているときは 模試の境界得点の受験者の合格率は1/2より大きくなる.これらの関係は 従来公表されている難易度では十分に説明されていない.本論文では 模試得点や自己採点等の変数Xとそれによって評価される大学入試得点Yが 2次元のガウス分布に従うものとしてモデル化し 合格最低点 最低合格者の水準および合格難易度の3つを定量的に定義し検討する.さらにこの統計モデルを用いて 合格者の中の入学手続者の入試得点上の分布を表現し 入学手続の予測に応用することを提案する.
著者
宮崎 太郎 加藤 直人 金子 浩之 井上 誠喜 梅田 修一 清水 俊宏 比留間 伸行 長嶋 祐二
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2012-NL-207, no.7, pp.1-6, 2012-07-19

本稿では,固有名詞を手話に自動翻訳する手法について述べる.我々が翻訳の対象としているニュースや気象情報には,地名や人名などの固有名詞が頻出するが,その手話への自動翻訳の研究はこれまで行われてこなかった.固有名詞の翻訳は従来,外国語の場合ではその読みに基づいて変換するtransliterationとして研究されてきた.しかしながら,手話では固有名詞の翻訳は読みに基づくことは少なく,「漢字手話」が使われることが多い.本稿では,「漢字手話」に基づいて日本語の地名や人名を手話に変換する手法について述べる.また,提案手法を用いた主観評価実験を行い,提案手法の有効性を確認した.
著者
中園 薫 長嶋 祐二
出版者
兵庫県立福祉のまちづくり研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

手話表現に見られる視覚言語独特の写像的表現方法をピクトグラムデザインに応用した理解しやすいデザイン手法,およびマクロな表現から細かい手指の表現までを階層的に記述する視覚表現手法の確立を目指して研究を進めた.手話会話映像分析作業から抽出された手話独特の表現様式を利用し,抽象的概念を表現した3~数枚の動画ピクトグラムを作成し,評価実験により了解度の向上を確認した.次にTVMLにより,アニメーション的な動きのある動画ピクトグラムを記述・作成する手法を試みた.さらに記述が容易なマクロ表現からTVMLへ至る階層的表現の枠組みと変換によってTVMLの詳細なプログラミング作業を簡略化する手法の検討を行った.
著者
中園 薫 角田 麻里 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.457, pp.147-152, 2011-02-28
参考文献数
2

著者らは,外国人旅行者や聴覚障害者などの音声コミュニケーションが不可能または困難な人達を対象として,コミュニケーションを代行支援するコミュニケーション補助技術VUTE (Visualized Universal Talking Environment)の研究を進めている.これまでに,急病,怪我や火事など救急時に119番に電話をかけて緊急通報する代わりとなるシステムVUTE 2009を試作したが,これに続いて鉄道駅などでの公共交通機関での対話を支援するシステムVUTE 2010を試作した.本システムは携帯端末上に絵記号を表示することにより,利用者に適切な絵記号を選択させ,その内容に応じた文章を出力する.本稿では,本システム開発のために行った会話内容の分類系統化や絵記号のデザイン指針などについて述べる.さらに,日常的にコンピュータ等を使用しない50歳代〜60歳代の7名の被験者を対象に評価実験を行った.その結果,本システムを利用することによって,あらかじめ設定した駅での会話状況において生じる会話文を,文字や音声を使用せずにVUTEを操作することにより,出力できることを確認した.
著者
寺内 美奈 久保 敦 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.57, pp.59-64, 2006-05-12
参考文献数
6
被引用文献数
4

聴覚に障害のある人のコミュニケーション手段の一つである手話は,手指信号と非手指信号より構成されている対話型言語である.著者らはネイティブサイナによる手話対話をできるだけ詳細に記録し,対話主導権のあり方,会話進行の特徴を明らかにすることを検討してきた.また,非手指動作(NMS)を抑制した場合や手指動作(MS)を抑制した場合に対話中の発話交替に与える影響について解析を進めている.本報告では,時間遅延が発話交替にどのような影響を及ぼすか調べるため,一組の対話中に伝送遅延を施し,その対話状況を解析した.その結果,遅延環境下では協調戦略的介入が2倍近くになることと,招致介入は遅延の影響が少ないことが判明した.また,通常伝送下での対話は遅延環境下よりも戦略的介入が積極的に行われたことを確認した.
著者
中園 薫 長嶋 祐二 細野 直恒
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.488, pp.85-90, 2009-03-16
被引用文献数
4

著者らは,外国人や聴覚障害者など,音声でのコミュニケーションが不自由な人を対象とした,コミュニケーション補助,システムVUTEを開発している.従来のAACがほとんどが静止画ピクトグラムを用いていたのに対し,VUTEでは動画ピクトグラムを用いることにより理解度の向上を計る.また,動画ピクトグラムのデザインの際に,手話表現を参考としている.現在,消防や怪我,急病などの救急時におけるコミュニケーションに限定して,システムを試作中である.本報告では,手話の表現様式の分析に基づいた,動画ピクトグラムのデザイン指針について述べる.続いて,試作したシステムの構成と機能概要について述べる.
著者
長嶋 祐二 市川 熹 神田 和幸 原 大介
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,手話の非手指信号の言語学的機能やコミュニケーションのための認知機能を解明し,その結果を手話画像の符号化,アニメーション生成などに適用することである.本研究では,下記の主な項目について成果を得た.1.認知的機構の解析では,事象関連電位N400計測に基づいた意味処理過程解析の検討を行った.その結果,手話・文字による意味的逸脱単語でN400が観察され電位は文字刺激で大きいことがわかり,呈示モダリティによって処理過程の違いを示した.対視線データの計測では,視線の停留と習熟度との相関を示し,理解度が上がれば顔への停留率が向上する結果を得た.2.解析支援システムでは,電子タグ付けならびに,磁気センサーからの3次元データを描画するシステムの構築を行った.この支援システムにより,映像と生理データを同期して解析することが可能となり,解析時間の効率化が図れた.3.記述・解析部では,手話の階層的形態素NVSモデルの非手指信号の記述機能の強化を行なった.4.対話モデルの解析では,抑制-非抑制手話を解析し,抑制部位の調動が表出可能な身体動作へ変形するメカニズムの存在が示唆された.また,手話の遅延検知限は100〜200msであることを明らかにした.音声会話と比較して,手話は遅延に関して寛容であることを示した.5.画像符号化では,さまざまなサイズの手話映像の評価から読み取りには,空間解像度より画像のフレームレートが重要であることがわかった.上記の成果を基に手話動画像符号化として新しいAdapSync符号化を提案した.本研究を通して得られた成果は,国際会議をはじめ電子情報通信学会論文誌・学会誌,ヒューマンインタフェース学会論文誌・学会誌などに掲載あるいは掲載予定である.尚,本研究の成果をうけ、手話の対話解析を通し脳科学的な認知科学的側面からの理解機構解明の作業を続行している。