著者
白木 邦彦 河野 剛也 安宅 伸介 永田 智
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

レーザースペックル眼底血流計はこれまで主に視神経乳頭での血流測定に使用されてきた。視神経乳頭上の太い網膜血管を測定領域から除外すれば、視神経乳頭の組織血流量をレーザースペックル眼底血流計のSBR値が反映する。眼底血流測定に際しては、レーザースペックル眼底血流計は網膜と脈絡膜の両者の組織血流を反映するとされる。そこで、網膜循環に影響を及ぼさない脈絡膜病変では脈絡膜循環の異常を反映すると考えられるが、微小な脈絡膜循環の異常を把握しているかは不明である。今回、網膜血管を有しない家兎眼底において、臨床で日常的に施行されている豆まき状の光凝固を施行し、凝固部位間の非凝固部位領域の脈絡膜血流量の変化を経時的に検討した。さらに、沃素酸ナトリウム投与によって網膜色素上皮を障害し、続発的に生じた脈絡膜毛細血管の変性・萎縮領域に関してレーザースペックル眼底血流計にて経時的にSBR値の変化を検討した。レーザー光凝固部位ではSBR値の顕著な低下が早期よりみられ、経過観察期間中持続していたのに加えて、凝固部位間の非凝固部位でも3ヶ月、6ヶ月後にSBR値の低下、すなわち血流の減少がみられた。また、沃素酸ナトリウム投与例での網膜色素上皮障害部では、投与1ヶ月後には71%にSBR値が低下し、6ヶ月後にはさらに58%にまで低下し、持続的な脈絡膜血流量の低下がみられた。以上より、レーザースペックル眼底血流計を用いて眼底の脈絡膜の微小循環変化の検討が可能であることが明らかとなった。