著者
野村 哲也 西良 雅夫 中筋 加恵 澤井 克彦 吉川 範子 立川 茂樹 安宅 啓二
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.223-226, 2004-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10

急性の肺血栓塞栓症を来し心停止となったが,3時間の心肺蘇生法の後に心拍が再開し,ほとんど神経学的欠損なしに回復した症例を経験した。症例は57歳,女性。左股関節再置換術を受けるため,深夜の長距離バスを利用して翌朝に来院,直後に心停止となった。乗車中ほとんど動いていなかった。3時間の胸骨圧迫による心肺蘇生法の後,心拍が再開し意識が回復した。肺動脈近位部の血栓が心臓マッサージにより破砕され,心拍が再開した可能性が考えられた。長時間の心肺蘇生法を行ったが出血所見を認めなかった。肺動脈の血栓を破砕吸引し,血栓溶解療法を行った。その後肺水腫となり,循環も不安定であったが,徐々に改善し人工呼吸器からも離脱できた。上肢にわずかに振戦を認めたのみで独歩退院できた。心肺蘇生法をいつまで行うかについては明確な基準はないが,長時間の心肺蘇生法にもかかわらず神経学的後遺症をほとんど認めなかった症例を経験した。
著者
山本浩詞 田中陽介 脇山英丘 安宅啓二
雑誌
第55回日本脈管学会総会
巻号頁・発行日
2014-10-17

症例は60台男性。2007年に神鋼加古川病院にてAAAに対するY-graft置換術を施行されている。その後の経過観察中に右内腸骨動脈瘤が徐々に増大,塞栓目的で2013年6月当院に紹介された。CTでは瘤は34mm大,造影早期相では低吸収値を示していたが,後期相で内部が造影され,type2エンドリークが疑われた。Y-graft右脚はCFAに吻合されていたが,EIAの一部は開存し下腹壁動脈が造影されていたが,ここから外陰部動脈が造影され,内腸骨動脈に連続するような画像を確認できた。CFAは吻合部であるため同部を慎重に18Gサーフロー針で穿刺し,外筒をシース代わりにマイクロカテーテルを挿入して施行した。外陰部動脈から内陰部動脈を介し内腸骨動脈本幹が描出された。マイクロカテを瘤内まで進め塞栓を施行した。このルートから陰茎背動脈も分岐しており,性機能温存の為液体塞栓物質(NBCA等)は使用せず,瘤内から本幹にかて18トルネードコイル18本で塞栓施行。術後瘤内の血流は消失し,良好に経過している。AAA治療後のtype2による内腸骨動脈瘤の血管内治療は困難な事が多い。当院では深大腿動脈からの側副路を塞栓した症例・CTガイドにより上殿動脈を穿刺ここからマイクロカテーテルを挿入し塞栓した症例を経験し,良好な結果を得ている。今回のケースを含め,側副血行が発達していることが多く,術前の詳細なCT診断にて,適切なアプローチルートを選択する事でマイクロカテーテルを進めての血管内治療は有効な治療法であると考える。