著者
安斎 勝行 竹内 治男 青木 明 八田 善夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.493-499, 1991-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

原発性肝細胞癌 (肝癌) を中心とした各種疾患において血中PIVKA-II (protein induced by vitamin K absence or antagonist-II) 濃度を測定し, その臨床的意義について検討した.肝癌におけるPIVKA-IIの陽性率は56.1%で, α-fetoprotein (AFP) の73.7%に比して低値であった.しかし他の疾患での陽性率は極めて低く, PIVKA-II陽性症例の91%が肝癌であった.PIVKA-IIはAFPとは相関せず, 両者を組み合わせることにより肝癌の診断率は向上した.またAFP非産生肝癌の26.7%にPIVKA-IIが陽性を示した.以上よりPIVKA-IIは肝癌に特異性の高い腫瘍マーカーであり, 肝癌のスクリーニング検査に不可欠であると考えられた.一方PIVKA-IIは, ある程度進行した症例に陽性となる傾向がみられ, 肝癌の早期診断のマーカーとしては限界があると考えられた.PIVKA-IIは肝癌治療によって低下することから治療効果判定や経過観察のモニタリングの指標として応用され得るものと考えられ, とくにAFP非産生肝癌には有用と思われた.PIVKA-IIはビタミンKの投与により低下することから, 判定に際してはこの点を留意する必要があると考えられた.