著者
石井 直明 安田 佳代
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第54回大会
巻号頁・発行日
pp.62, 2011 (Released:2011-12-20)

線虫は以下のように放射線に対して高い耐性を示す。 1. 胚発生期において、放射線耐性は最初の細胞増殖期で低下した。線虫はモザイク卵であるため、分裂に伴いターゲットサイズが大きくなってきたことが原因と考えられる。その後、後半の分化期に入ると前半に比べて40倍も耐性になった。この時期には多くの細胞が分裂を停止したことが原因と考えられる。孵化後の幼虫期、及び成虫期ではさらに放射線耐性になった。 2.線虫の一種、C. elegansは幼虫期に餌が不足したり、虫の密度が高くなると正常発生から外れて耐性幼虫になる。餌を与えた時点で正常発生に戻る。耐性幼虫から正常発生に戻すまでの期間に依存せず、正常発生後の寿命が一定なことから耐性幼虫期を「non-aging stage」と呼ぶ。耐性幼虫期に電離放射線を照射し、正常発生後の寿命に変化があるかを調べたところ、寿命延長効果が認められた。その効果は耐性幼虫になってから照射までの期間や照射から正常発生までの期間で大きく変化した。 3.電離放射線照射前の酸素暴露が強いホルミシス効果を示した。この効果は電離放射線と紫外線に高い感受性を示す突然変異体、rad-1 とrad-2で消失した。 線虫は電離放射線により生じたDNAの1本鎖切断を早期に高い効率で修復することから、線虫は放射線に対して強い防御機構を備えていることが示唆された。